■「何が嫌いかより 何が好きかで自分を語れよ!!!」『ツギハギ漂流作家』

 未開の地で未知なる物を求める「漂流作家」の活躍を描く冒険活劇『ツギハギ漂流作家』(西公平氏)は2006年に連載され、22話で終了した。

 本作のパワーワードは、主人公の吉備真備が最終話で叫んだ「何が嫌いかより 何が好きかで自分を語れよ!!!」だ。

 吉備が生まれ育った村は、とある商人の悪だくみで分裂し、村人同士が憎みあっていた。一触即発の村人たちに幼い吉備が「どうしてお互いの欠点探して傷つけ合ってばっかいるんだよ」「百の罵声をあびせるよりも 好きなもん一つ胸張って言える方がずっとカッコイイだろ」と言い放ち、続けて件のセリフを叫ぶのだ。

 嫌いなものを言い合って喧嘩するより、好きなものを語り合った方がすばらしいのではないか? そんな問いを投げかけてくるこのセリフはネット上で人気を博し、現在も語り継がれている。

 ちなみに作者の西氏は『ツギハギ漂流作家』終了後も漫画家を続けており、近年では漫画誌『ハルタ』(KADOKAWA)にて『九国のジュウシ』全3巻を発表している。

 

『週刊少年ジャンプ』の連載は、とても過酷なことで知られている。連載を続けるのはおろか、新連載を掴みとるだけでもほんのひと握りの漫画家だけが成し遂げる偉業なのだ。

 結果は打ち切りとはいえ『ジャンプ』で連載をはじめた時点で、その作者には光るものがある。その証のひとつが、今回紹介したような脳裏に焼き付くワードセンスではないだろうか。

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