■1975年はバイク漫画の良作『750ライダー』・悪魔術ホラー『エコエコアザラク』が誕生
黒魔術を扱うホラーが新鮮だった古賀新一さんの名作『エコエコアザラク』は、1975年にスタート。佐伯日菜子さんが黒井ミサ役で出演した1997年のドラマ版など、同作は平成に入ってからも数回にわたって実写化されており、時代を超えて愛されている。当時、刺激を受けて魔法陣を描いたり呪文を唱えたりしたという読者も多いのではないだろうか。
また、1975年には石井いさみさんによるバイク漫画のレジェンド作品『750ライダー』もスタートしている。ホンダ・ドリームCB750FOURを乗りこなす高校生の主人公を中心に、彼の身の回りで起こる出来事をシリアスに描く。70年代後半から80年代にかけてはバイクブームが巻き起こったが、同作もその火付け役となり、ナナハンへの憧れを持った読者も多い。
すでに連載中の『ブラック・ジャック』や『がきデカ』とは方向性の違う良作が始まったことで、『週刊少年チャンピオン』はさらに部数を伸ばしていく。
■黄金期を駆け上がる1976年『月とスッポン』『青い空を、白い雲がかけてった』
1976年に入っても『週刊少年チャンピオン』の勢いは止まらない。
この年には、ラブコメ×ギャグが新しい柳沢きみおさんの青春漫画『月とスッポン』の連載が始まる。中学生から高校生に成長しながらゆっくりと育んでいく美女と平凡な男の子のまっすぐな恋愛模様は、恋愛に興味津々な年頃の読者をクギヅケにした。
また、個性の強い当時のラインナップの中では異色な、あすなひろしさんの『青い空を、白い雲がかけてった』も1976年にスタートしている。不定期掲載ではあったが、学生たちが平凡な日々の中で感じる若者特有の繊細な感情の揺れを情感たっぷりに描き、多くのファンを獲得した。
■200万部を突破した1977年!『マカロニほうれん荘』など伝説の作品が登場
そして1977年にはついに発行部数200万部を突破。『週刊少年ジャンプ』を抜いて5大少年週刊誌トップの座を獲得し、黄金期のピークに入っていく。
この年の注目作品といえば、今でも根強いファンを抱える鴨川つばめさんの『マカロニほうれん荘』だろう。鴨川さんが描く斬新なコスプレギャグ、抜群のテンポの良さ、圧倒的なセンスは、読者に大きな衝撃をもたらした。
同作と作者の鴨川さんの運命を変えたのが、前述の名物編集者・壁村耐三さんだというのは有名なエピソードだ。壁村さんが周囲の反対を押し切って『マカロニほうれん荘』連載を決めていなければ、この名作が世に出ることはなかったかもしれないし、発行部数ももっと低かったかもしれない。
ほかにも、新米教師と生徒の関わりを描いた、望月あきらさんの『ゆうひが丘の総理大臣』も同年に連載が始まっている。
その後1979年には発行部数250万部超まで登り詰めるが、80年代に入ると人気作品の完結と壁村氏の引退が重なり、黄金期は終焉を迎えていく。
黄金期の『週刊少年チャンピオン』の連載作品を改めて振り返ってみると、令和の現在まで語り継がれている傑作ばかり。どの作品をとっても、雑誌の目玉になるといえるだろう。なお、この時期の『チャンピオン』の空気感は、魚乃目三太さんの漫画『チャンピオンズ~週刊少年チャンピオンを創った男たちの物語~』や、吉本浩二さんの漫画『ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~』でも描かれており、名物編集長・カベさんの人となりも知ることができる。
こんなに凄いタイトルを同時に読めた『チャンピオン』をどのような人たちが作っていたのか、読めば圧倒されることは間違いない。