1969年7月の創刊と、現在刊行中の少年漫画雑誌の中では一番遅くに創刊された『週刊少年チャンピオン』。創刊時は隔週刊で、手塚治虫さんの『ザ・クレーター』、永井豪さんの『あばしり一家』、ジョージ秋山さんの『ざんこくベビー』など豪華作家陣が連載を持ち、1970年からは週刊誌へと形態を変えた。
創刊当初から他の少年誌に比べ部数は低迷していたが、1972年の水島新司さんの『ドカベン』の大ヒットを機に部数が伸びていく。その後、1970年代後半から79年にかけてはまさに黄金期とも呼べる時代に突入し、一時は『週刊少年ジャンプ』の部数を抜いて、少年誌のトップにまで上り詰めたこともあった。そこで今回は、『週刊少年チャンピオン』の黄金期に連載されていた名作たちを振り返ってみたいと思う。
■『ブラック・ジャック』『恐怖新聞』『ドカベン』も!大御所による名作が生まれた1972年~73年
『チャンピオン』躍進の立役者となったのは、1972年に就任した伝説の編集長・壁村耐三さんだ。連載形式の大胆な変更をはじめ、同氏の破天荒で情熱的な行動がなければ名作たちは生まれていなかっただろう。同氏の編集長時代には1972年に前述の『ドカベン』が始まり、さらに翌年の1973年には、レジェンド作家たちの往年の名作の連載が始まる。
特に手塚治虫さんのヒット作がなかった時代に連載がスタートした『ブラック・ジャック』は、連載が始まるとたちまち人気に。同作は途中で不定期掲載になりながらも1983年まで続き、黄金期を支え続ける。
ホラージャンルでは、つのだじろうさんの『恐怖新聞』も欠かせない作品だろう。70年代がオカルトブームだったことも相まって、大人も子どもも夢中になった。他にも、永井豪さんがメディアミックス企画として発表した『キューティーハニー』も、令和の時代まで語り継がれる『チャンピオン』の名作だ。
■部数を伸ばすきっかけとなった1974年の『がきデカ』
1974年には山上たつひこさんの『がきデカ』がスタートする。こまわり君が繰り広げるとんちんかんでお下劣なギャグの数々は当時、老若男女問わず多くの人々を夢中にさせた。
この作品の爆発的ヒットこそが、黄金期へ向けた大きなターニングポイントとなったと言っても過言ではないだろう。全盛期の『週刊少年チャンピオン』は扱う作品のジャンルがバラエティ豊かで、お笑い好き、恋愛もの好き、ホラー好き、スポ根好きまでどんな層にも刺さったが、『がきデカ』の登場で、特に「チャンピオンのギャグ漫画は面白い」というイメージがついた。
ほかにも、1974年にはほのぼのギャグとリアリティある人間ドラマが共存するジョージ秋山さんの漫画『花のよたろう』の連載もスタートしている。