元祖スポ根少女漫画『アタックNo.1』日本にバレーボール旋風を巻き起こした名作を振り返るの画像
『アタックNo.1』DVD-BOX vol.1

 昭和40年代、日本にバレーボールブームを引き起こした少女漫画をご存じだろうか。それが、浦野千賀子氏による『アタックNo.1』だ。1968年1月から1970年12月まで『週刊マーガレット』(現:『マーガレット』(集英社))に掲載され、その後、アニメ化、ドラマ化などさまざまなメディアミックスがされ、世代を超えて根強い人気を誇っている。

 “元祖スポ根漫画”としても有名な本作だが、しかし令和の今、あらためて本作を読み返してみると、ちょっとそのイメージが変わる。現代でも見られる人間関係のトラブルや、バレーボールに賭ける熱い思い、そして昭和40年代を彷彿とさせる描写も多く、新たな面白さを発見できるのだ。今回はそんな『アタックNo.1』の魅力を振り返りたい。

■今も昔も変わらない人間関係のトラブル

『アタックNo.1』は、そのストーリー性はもちろん、バレーボール部を中心に展開される人間関係も面白い。

 主人公の鮎原こずえは、東京の名門校から富士見学園に転校してきた少女だ。もともとバレー経験があったこずえはバレー部から勧誘されるも、その活動内容に不満を抱き「あなたたちのバレーはなっていない」と反発する。

 これに怒ったバレー部のメンバーは、こずえとひょんなことから仲良くなった不良グループとバレーの試合をすることになり、結果的にこずえたちが勝利する。これを機にこずえたちはバレー部に迎え入れられるのだが、その後は試合を重ねつつ、バレーの実力も精神的にも成長していく。

 連載開始からすでに55年以上経過している本作だが、進学校から転校してきたこずえに嫉妬する生徒たちやチームのキャプテンを狙うライバル、合併した中学校のバレー部における主導権争いなど、人間関係のトラブルは今にも通ずるものがあるだろう。

 また、大会で優勝したあとは全校生徒から英雄視され、その結果“バレーボール専用の体育館を作ってほしい”と、おごった態度を取り、のちに後悔するのもなんとも人間らしい。

 本作はただこずえがまっすぐに成長するだけでなく、時には間違えながらも反省し、成長していく姿が印象的だ。昔の作品ではあるものの、バレー部員が織りなす行動や反省は、今読んでも学べることが多いのだ。

■連絡手段は手紙! 昭和40年代ならではのあれこれも面白い

『アタックNo.1』は昭和43年に連載された作品なだけに、当時の文化や生活習慣がよく登場する。

 まず、友達や他校のチーム同士の連絡手段は基本的に“手紙”だ。昭和40年代はまだ電話の普及率も低かったようで、友人への連絡はわざわざ玄関に手紙を投函している様子もあった。筆者は本作を読んで初めて、手紙の返信には“拝復”という言葉が使われると知った。

 また、力自慢の女の子には“女番長”というあだ名があったり、カップルが寄り添う姿を見て“まあハレンチ”というセリフも飛び出すなど、当時ならではの言葉も満載だ。

 全国大会に向かう電車の中でこずえは「いよいよあこがれのひのき舞台ね」と言い、友人の早川みどりは「血わき肉おどるって感じね」と答えている。いずれも、現代の中学生はなかなか使わない言葉だろう。

 このほか、こずえの両親が普段着として着物を着ていたり、体操部の顧問の先生はセクシーなレオタードだったり。不良っぽい少女たちとこずえがゴーゴーを踊るシーンなどもあり、昭和生まれにとっては思わずにやけてしまうような、懐かしい文言がたくさん登場するのも魅力だ。

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