■時代の雰囲気が詰まった90年代の名作ドラマ
『銀狼怪奇ファイル』の魅力の一つとして、“ツッコミどころの多いトリック”もあるだろう。当時は子どもゆえに「なるほど」と納得して見ていたが、今思えば危うすぎて「なんでやねん」とツッコミたくなってしまう。
たとえば、先述の「首なしライダー」は、生徒が見た映画の中にサブリミナル効果で催眠術を仕込み、普通の人間を首なしライダーに見えるようマインドコントロールしていたというトリックだった。催眠術とサブリミナル効果は似て非なるもので、一世一代の殺人ショーにこの手を使うのは博打すぎる。
しかも、犯人だったのは殺された少年の父親だったのだが、彼はカレー店の店主ながら息子の首と殺した生徒の体を繋ぎ合わせて蘇生させるというとんでもない科学技術を披露していた。
「人体発火」事件も、リンの含まれたセーターが静電気で発火するまでは普通だが、最終的には犯人・五代美香が「マイクロ波照射銃」で相手を発火させるというぶっ飛びトリックを見せた。普通の女性がどこからそんな化学兵器を……。
当時の子どもたちを恐怖のどん底に突き落とした「破壊の死神」もまた、ツッコミどころ満載だった。ポルターガイストの原因が超低周波発生装置、というところまではいい。だが、死神が絵から抜け出る理由が、寝ている間に付けられた偏光コンタクトのせいというのは斜め上すぎる。ホログラムを作って壁に入るように見せていたのも壁を触られたら一発アウトなので、犯人目線になると心配になってしまう。
と、ハイレベルな科学技術によるとんでもトリックも多かったが、銀狼は最終的にそれらを解明するので、やはりIQ220は伊達じゃない。
いろいろとツッコミどころはあるが、それでも『銀狼怪奇ファイル』が名作なのは間違いない。オカルトネタとトンデモ科学を盛り込んだおどろおどろしいサスペンスは、1990年代ならではの作品だ。本作はDVD化されておらず、令和の現在、見るチャンスがほとんどないのが残念でならない。