『弱虫ペダル』や『アオアシ』にも…冒頭の伏線にゾクゾク! スポーツ漫画「第1話」で冴えない主人公が才能の片鱗を見せていたシーンの画像
少年チャンピオン・コミックス『弱虫ペダル』第1巻(秋田書店)

 競技未経験だった主人公が思わぬ才能を発揮し活躍することも多い「スポーツ漫画」だが、実は物語の第1話からその高いポテンシャルの片鱗を見せていたケースも少なくない。主人公たちが物語開始直後に見せた、才能を予感させるシーンの数々について見ていこう。

■オタク趣味が培った“クライマー”の能力! 『弱虫ペダル』小野田坂道

 2008年から『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で連載されている渡辺航氏の『弱虫ペダル』は、自転車を使った“ロードレース”を題材としたスポーツ漫画だ。

 アニメや漫画、ゲームが大好きなオタク趣味を持つインドア派の高校生・小野田坂道が、知らず知らずのうちに鍛え上げられた“クライマー”としての素質を発揮し、仲間たちとともにさまざまなロードレースへと挑んでいく本作。

 小柄で丸眼鏡がトレードマークの小野田坂道だが、他人と会話することが苦手で体育会系の人間とも距離を置いていた。しかし、小学校3年生のころから秋葉原までの片道45kmの道のりを自転車で通い続けた結果、本人も知らないうちに自転車競技に必要なスタミナや身体能力を身につけていく。

 彼がわざわざ自転車で秋葉原を目指した理由だが、なんと“自転車ならタダで秋葉原まで行ける”というもの。より多くのグッズを購入したいがため、往復でなんと90km近い距離を自転車で移動していたのだ。

 また、自宅の前に激しい“坂道”があったことも一因となり、小野田の肉体は本人が意図しないうちに、めきめきと鍛え上げられていた。

 物語の舞台である「総北高校」は小高い山奥に建っているため斜度が20%を超える坂道があるのだが、物語冒頭1話から彼はこの“激坂”を愛用のママチャリで鼻歌を歌いながら軽々と登ってみせている。

 この坂道の何気ない凄技が同級生・今泉俊輔の目に留まり、物語は大きく動き出していく。一見、運動とは程遠いキャラクター性をしていながら、無意識に常人離れした脚力やスタミナを手に入れていた、なんとも面白いキャラクターだ。

■フィールドを支配する凄まじい把握能力…『アオアシ』青井葦人

 2015年より『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で連載されている小林有吾氏の『アオアシ』は、弱小サッカー部出身の高校生・青井葦人が、Jユースのセレクションに誘われたことをきっかけに世界を目指し、奮闘していくサッカー漫画だ。

 主人公・葦人は中学からサッカー部に入っていたものの、フィジカル面ではとくに秀でた部分もない少年だった。中学では部活内で“エース”として活躍していたが、むしろ他者とかかわらない独善的なプレースタイルが欠点にすらなっていた。

 物語冒頭、中学最後の試合で敗北を喫する葦人だが、そんな彼に声をかけたのがユースチーム「東京シティ・エスペリオンFC」の監督・福田達也である。

 福田はこの試合を見ていて、縦横無尽に走り回っている葦人のもとに、なぜかボールが渡ってくることを疑問に思っていた。葦人はその“奇妙な現象”の種明かしをするのだが、なんと彼は試合中、自分以外の敵味方合わせた“22人の位置”を暗記し、ボールが来る場所を完璧に把握していたのだ。

 この凄まじい“空間把握能力”に可能性を見出した福田は、彼をユースのセレクションへ招待し、葦人が世界へ羽ばたくきっかけを作ったのである。

 いわずもがな、広大なフィールド上の選手位置を把握し立ち回るというのは容易くできる芸当ではなく、それを中学生のころから無意識に発揮し、活用していた点に葦人の類まれなる才能を感じざるをえない。“個”の力ではなく、チーム全体を動かすとんでもない才能を秘めたキャラクターだ。

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