■実はお見合いシーンの多いギャグ漫画『お父さんは心配症』
岡田あーみんさんが描いた『お父さんは心配症』は、80〜90年代の爽やかな少女漫画界のなかで異彩を放ったギャグ漫画だ。
主人公の佐々木光太郎は、シングルファザーとして1人娘の典子を育ててきた中年男性だ。娘の典子を心配するあまり、典子のボーイフレンド・北野に対して過激な攻撃をしたりと、暴走が止まらない。
そんな光太郎はお見合いをして最終的には安井千恵子と結婚するのだが、その前に2人の女性ともお見合いをしていた。
1人目は、光太郎の父親から勧められた花園るり子という、額に三日月の傷がある女性だった。その傷は野生のニシキヘビが襲ってきたときに立ち向かってできた名誉の傷だという。それを聞き、恐れをなした光太郎は会う前に断っている。
2人目は、不良の息子を抱える寝棺竹子という体の弱い女性だ。外見は美しいものの、暴走族である息子を抱えているうえ、肝心なところでいつも吐血してしまうので、どうにもうまくいかない。
結局光太郎は看護師である安井さんとお見合いをしたあと、ハチャメチャな展開を経ながらも幸せな結婚をする。かませ犬的なキャラとなったお見合い相手たちであったが、寝棺さんとその息子の一郎はその後もたびたび本作に登場し、あーみんワールドと呼ばれるこのギャグ漫画の世界でおおいに活躍してくれた。
昭和の時代は当たり前のようにおこなわれていた「お見合い」。当時の少女漫画にもそうしたシーンはよく登場したが、多くの場合そのお見合い相手とはうまくいかず、本当に好きな人と対比する存在として描かれてきたように見える。
ちなみにマッチングアプリが登場した今、漫画でもアプリを介した出会いが描かれることは多いようだ。ひょっとしたら数十年後にはそのようなアプリを懐かしむ声があがり、今回のような記事となって紹介されているかもしれない。