昔の少女漫画には、たびたび“お見合いシーン”が登場する。実際、昔の結婚は恋愛だけではなく、お見合いによって結婚相手を決めるケースも多かった。
しかし少女漫画に登場するお見合いの多くは、“ヒロインが彼を忘れるために仕方なく”、“嫉妬したヒロインが彼への当てつけで”、といった理由でおこなわれることが多い。
そんなシーンでのお見合い相手は、たいてい悪い人ではないが、決して主人公とくっつくことはない“かませ犬”になる場合が多いのだ。今回はそんなちょっと残念な、主人公のお見合い相手をつとめたキャラたちを紹介したい。
■プロポーズしてくれない腹いせに…『白鳥麗子でございます!』
鈴木由美子さんによる『白鳥麗子でございます!』は、昭和から平成にかけて人気を博した作品だ。プライドの高い主人公の白鳥麗子が織りなすラブコメディーで、これまで何度もドラマ実写化されている。
麗子は幼いころから同級生の秋本哲也が大好きなお嬢様。紆余曲折を経て結ばれる2人なのだが、本作でも麗子がお見合いをする場面がある。
友人カップルが“大学を卒業したら結婚する”という話を聞き、焦る麗子。“プロポーズをしてほしい”とさりげなく哲也にアプローチをするも、逆にうんざりされてしまう。
そんなとき実家からお見合い話をもらった麗子は、なかば当てつけでお見合いをすることに。その様子を見た哲也からの「すれば」の冷たい一言を受け、泣きながら実家に戻った麗子は父親がセッティングしたいわゆる“三高”相手とのお見合いに挑むのだ。
相手は名もないメガネ姿の爽やかな男性だった。麗子を見て「わたしなどにはほんとうにもったいないようです」など恐縮しており、とても良い人なのが分かる。しかし麗子が本当に結婚したい相手は、もちろん哲也だ。
結果的に麗子はお見合いを勝手に終わらせ、海を泳いで哲也のもとに帰ろうとしたところで漁船に乗った彼が麗子を迎えに来る……というエピソード。
この回では、麗子が哲也に向ける深い愛情が伝わってくる。ちなみに物語の終わりは、漁船の上で麗子と哲也がお見合いごっこをし、“このお見合いおうけいたします”という幸せなオチがついている。
■父親から政略結婚を持ちかけられ…『ベルサイユのばら』
池田理代子さんの『ベルサイユのばら』は、連載から50年を経ても人気の衰えない少女漫画だ。男装の麗人・オスカルを中心に、フランス革命前後のベルサイユを情熱的に生きた人々のストーリーが描かれている。
主人公のオスカルは、女性でありながら、幼いころから男性として育てられてきた。そんなオスカルは青年貴族であるフェルゼンに初恋をし、その後は幼馴染であるアンドレと結ばれることとなる。
しかしアンドレの妻になる前、オスカルは父親から無理やり縁談を持ちかけられていた。その相手がジェローデルである。
もともとジェローデルは、近衛連隊長を務めるオスカルの部下であった。しかしジャルジェ家の跡取りがほしいと考えたオスカルの父の考えのもと、オスカルは彼と結婚するよう命じられてしまう。
怒りに震えるオスカルだったが、そんな彼女に「最初からわたしはあなたを女性としてみることしかできなかった」と、真摯に伝えるジェローデル。
その後、彼の甘い言葉に心が動きそうになるオスカルだったが、アンドレのことを想い、一生独身を貫くと決め、ジェローデルの求婚を断るのであった。
長髪でどことなく冷たい雰囲気を持つジェローデルだが、実はオスカルのことを思いやる誠実な男性だ。最後は平民の味方となり近衛兵に立ち向かうオスカルに対し、対抗することなく道を開け、オスカルのために軍務違反を犯している。
お見合いではうまくいかなかった2人だが、結婚したらどうなっていたのだろうか。意外とうまくいっていたのかもしれない!?