劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』も公開! 間口広げた“21世紀のファースト”『ガンダムSEED』の何が新しかったのか?の画像
劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』(C) 創通・サンライズ

 テレビアニメ『機動戦士ガンダムSEED』『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の続編として映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が2024年1月26日に劇場公開される。

 平成一桁生まれの筆者の世代にとっては馴染み深い作品ではあるが、放送からもう20年以上前の作品になってしまった。

 そこで今回は『機動戦士ガンダムSEED』について、なぜ大ヒット作となったのか? 何が新しかったのかを振り返ってみたい。放送当時小学生であった筆者の個人的意見も入ってしまうと思うがご了承頂きたい。

■ガンダムの間口を広げる作品として新規ファンを獲得

 2002年10月に放送開始する『機動戦士ガンダムSEED』がガンダムシリーズでどのような立ち位置で、どれほどの人気作品であったかをまずは確認する。

 1979年にテレビアニメ『機動戦士ガンダム』が放送開始し、後にシリーズ化され国民的人気作品となったガンダムシリーズだが、2002年当時は作られてから時間が経ってしまった上に、シリーズが長くなってしまい、どこから見ていいのか、どの作品が繋がっているのか分かりにくくとっつきにくいシリーズでもあった。

 当時は親に見せられるか、プラモデルぐらいしかガンダムへアクセスする道がなかったと記憶している。

 ガンダムシリーズで『SEED』の前作に当たるのは1999年4月期に放送開始した富野由悠季監督作品『∀ガンダム』だった。もちろんこの作品が名作であることは間違いない。特に最終話は何度見ても涙が出てくるほど素晴らしいものだが、前衛的なテーマや独特なデザインの主役機などの要素が相まって商業的には振るわなかった。

 このような理由から『SEED』に求められていたのは、まず商業的な成功、そしてガンダムへの間口を広げることだったと思う。そして後から振り返ると、その役目を十分に果たしたと言える。

 当時人気を測る指標であったDVDの売上枚数は2004年3月末時点で累計130万枚以上を記録し、プラモデルの売上も好調。各クールで切り替わる主題歌も魅力で、使用された楽曲が軒並みヒットチャートを賑わせる。スタイリッシュなキャラクターで女性ファンも多く獲得した。

『機動戦士ガンダムSEED』は00年代アニメを代表する大ヒット作品となったのだ。

■視聴しやすく、かつ面白い「最初のガンダム」に

 ガンダムは『機動戦士ガンダム』から始まりシリーズでひとつの世界観を共有している宇宙世紀シリーズと宇宙世紀以外の世界を舞台にしたアナザーガンダムが存在する。近年のヒット作である『機動戦士ガンダム 水星の魔女』もアナザーガンダムの一作だ。

『SEED』もまたアナザーガンダムにあたるが、作品としてのコンセプトは「新世紀(21世紀)のファーストガンダム」を目指すものだったと語られている。独立した作品として新規ファンが視聴しやすく、かつガンダムの面白さを伝えられる作品という意味だろう。

 このコンセプトは作品名にも表れていると筆者は考えている。それまでのガンダムシリーズの作品名は「機動戦士」と頭に付くと宇宙世紀。『機動武闘伝Gガンダム』『新機動戦記ガンダムW』『機動新世紀ガンダムX』のように「機動戦士」でないとアナザーガンダムというものだった。

『機動戦士ガンダムSEED』はその慣習を破ったタイトルであり「新世紀のファーストガンダム」という高い志を体現していた。以降のアナザーガンダム作品に「機動戦士」が使われることが多くなったことから、この試みは成功だったといえるだろう。

 ガンダムの魅力を伝えるべくオマージュ的な要素も多い。特にファーストガンダムを参照している点が多々見られる。もちろんまるっきり同じというわけではないが中盤までは敢えて踏襲していったのだろうと思えるほどに大筋が同じだ。しかしガンダムを知らなかった筆者の世代には新しく見えたものである。

 大成功した要因としてキャラクターの人気も挙げられる。主人公のキラ・ヤマト、幼馴染のアスラン・ザラ、ヒロインのラクス・クライン、カガリ・ユラ・アスハたちの人気は凄まじかった。当時のアニメ雑誌で人気キャラクターランキングがあるといつ見ても上位にいた。

 ガンダムらしさは残しつつ、シビアな戦争を描きながらもスタイリッシュなキャラクターが数多く登場し、またキャラ同志の恋愛模様も描かれる。初めて『ガンダム』を見るという人にとって「新世紀のファーストガンダム」として、非常にとっつきやすい作品だったのは間違いないだろう。

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