ありふれたメニューのはずなのに、なぜか無性に美味しそうに感じる“飯テロ”シーン。特に舞台が異世界だと、普段なんてことなく食べている料理が、特別美味しそうな魅力を放っている場面も多い。ときには、「何もそこまで……」と思わず笑ってしまうほどの感動が描かれることもある。
アニメや漫画・小説などで見るそうしたシーンに感化され、その日のご飯が決定されることもあるはず。そんな無性に食べたくなる、“異世界作品に出てくる美味しそうな料理”を紹介していこう。
■思わず生唾を飲み込む! 『異世界居酒屋「のぶ」』の「トリアエズナマ」
まず紹介するのは、蝉川夏哉氏によるライトノベルを原作とし、漫画やアニメ、ドラマとさまざまなメディアで展開されている人気作『異世界居酒屋「のぶ」』。タイトル通り、中世ヨーロッパ風の異世界で営業する日本の居酒屋「のぶ」を舞台にした作品である。
この作品の最初の飯テロシーンは、成人してビールを飲めるものならば生唾を飲み込むこと請け合いだ。居酒屋に行ったとき、「とりあえず生」と注文する人は多いだろう。それを異世界でも流行らせたのが、この「居酒屋のぶ」だ。異世界人のちょっと違うイントネーションで「トリアエズナマ」という言葉が飛び出すのも、クスリと笑いを誘う。
異世界人はドンッと目の前におかれるガラスのジョッキに驚き、さらにそれが冷えていることにも驚く。恐る恐る口にした、エールと思わしき「トリアエズナマ」。ゴクゴクと喉をならして飲み始めてしまえば、もう止まらない。
そして追い打ちをかけるようにお通しの枝豆が登場。皮がついたままの豆に「手抜きだな~」と呆れながら手をつけたが最後、絶妙な塩加減の枝豆と冷えた生のコンビネーションがクセになってしまう。この描写に思わず、冷蔵庫にビールと枝豆はあっただろうか?と考えてしまうのは、もはやしかたがないことだと思うのだ。
■少女の胸に刻まれた「冬の雲」の思い出…『異世界食堂 洋食のねこや』のチョコレートパフェ
犬塚惇平氏のライトノベルを原作とする『異世界食堂 洋食のねこや』は、土曜日だけ異世界につながる洋食屋を舞台にした作品。先に紹介した『異世界居酒屋「のぶ」』とともに、「異世界×グルメもの」の代表格としても知られている。
この作品で紹介したいのは「チョコレートパフェ」だ。作中の異世界人にとっての菓子といえば、焼き菓子か歯が痛くなるほど砂糖がまぶされたもの。甘さ控えめのクッキーですら、驚き満載の初めて食べるものになる。そこに生クリームやチョコレートソース、新鮮な甘い果物などがふんだんに使われたパフェが登場すれば、完全に未知のデザートだ。パフェにつきもののアイスクリームなどは、もはやそれが何だか一口では理解できないだろう。
そのパフェを異世界の少女が初めて口にしたとなれば、「これなんですか!?」と目をキラキラさせながら尋ねるのも納得である。両親と離れて暮らす孫を元気づけようと連れてきた彼女の祖父は、その問いにどう答えようか迷った。そしてひねり出した答えは「冬の雲」……少女の中に“雲を食べた”という特別な思い出が刻まれた瞬間である。
パフェを冬の雲と表現するとは、なんともメルヘンチックで素敵な発想だ。普通のパフェがキラキラ輝く宝石のように見える、一風変わった飯テロシーンといえるだろう。