■作者は新章を構想中『Dr.コトー診療所』
離島医療に尽力した医師・瀬戸上健二郎をモデルに描いた山田貴敏氏の『Dr.コトー診療所』も再開が待たれている名作だ。
離島医療、介護、福祉という社会的テーマ。その中で描かれる主人公の医師・五島健助と診療所の看護師・星野彩佳、島民との交流が胸を打つハートフルな物語が人気を集め、連載中の2003年と2006年には吉岡秀隆さん主演で連続テレビドラマ化がされている。
連載が始まったのは2000年で、『週刊ヤングサンデー』(小学館)にて。同誌の休刊に伴い、2008年からは『ビッグコミックオリジナル』(同)に移籍している。『週刊ヤングサンデー』時代に体調不良で長期休載をしており、治療をしながらの執筆だったのだろう。再開後も休載を挟みつつの掲載となり、2010年を最後に現在まで休載に入っている。10年以上の空白だが、2022年にはテレビドラマの続編が映画化されていることからも、多大な支持を受けている作品ということが分かるだろう。
山田氏はこの映画公開時に伴い「なるほど!ジョブメドレー」というサイトでインタビューを受けており、自身の病気や事故で負った怪我について明かしている。
ただ、闘病中ではあっても描くことを止めたわけでなく、これからの新章にも触れている。また、NHK鹿児島の「かごしまWEB特集」のインタビューでは、「コトーがなぜ離島医療に興味を持ち、島の医者になることになったのかというところまでを書こうと思います。」と、嬉しい近況としてより具体的な構想を語ってくれてもいる。
コトーと星野の関係がどうなるのか。非常に気になるところで連載はストップしているが、もしかしたら待望の最新話が読める日は近いのかもしれない。
■平成バスケ漫画の傑作『あひるの空』
『週刊少年マガジン』(講談社)で連載の日向武史氏による『あひるの空』は平成バスケットボール漫画の傑作と知られ、若い世代では『SLAM DUNK』よりも本作きっかけでバスケを始めたという人も少なくないだろう。
身長150センチに満たない小さな3Pシューター、車谷空を主人公に、九頭龍高校、通称“クズ高”の弱小バスケ部が最底辺から全国を目指すというストーリー。ロジカルでリアルに徹したバスケ描写に加え、平成バスケ漫画らしいストリートバスケ大会への出場もある。また、チームメイトが抱える家庭環境、学校内の問題、思春期の恋やトラブルなど高校生活で起こる青春ドラマも厚く描かれる作風が多くの支持を受けている。
連載は2004年にスタートし、単行本も50巻というかなりの長寿漫画だ。ただ、体調不良が原因で2019年5月の掲載を最後に長期の休載に入っている。同年の10月からは1年クールのアニメ放送がされており、このタイミングで連載再開するのではと期待されたが、残念ながらアナウンスはないままにアニメも2020年9月に最終回を迎えてしまっている。作者のXアカウントも20年5月以来止まっており、残念ながら近況は分からない状況だ。
物語にどういう形でピリオドを打つのかは作者のみが知ることだが、現状では部の目標である全国大会への出場はまだ叶っていない。ちょうど今は強豪の横浜大栄高校とインターハイ県予選を戦っている最中だが、この試合もクズ高の敗戦だったというのが先に描かれている。必死に努力しても届かない勝利は少年漫画の王道とは違う路線だが、それだけに現実的で、本作の共感性の高さにつながっているのだろう。負けながらもそれを糧に強くなっていくクズ高バスケ部。空たちの次の成長を早く見たいところだ。