■奇跡を演出することで民衆を掌握した「バラン」

 さて、最後はラオウの弟子という立場で秘孔を覚えた「バラン」だ。ブランカ王国を支配し、数々の奇跡を見せて光帝と名乗っている。コイツはブランカ王女のルセリを自分のものにしようと企み、サヴァ国に侵略しようとしている。ちなみにルセリはサヴァの王子サトラの婚約者だ。

 バランは巧みな人心掌握術で民衆を掌握していた。病気の赤ん坊を助けるなど素晴らしい行動もしている反面、自分を信じない者には死の制裁を加えたり、王城の地下ではブランカ王族を処刑するなど残忍な一面を覗かせていた。

 バランは子どものころ、幼い妹を病気で亡くしていた。バランが持ってきた薬を“血の匂いがする”と言い、いっさい飲まなかったのだ。おそらく他人を傷つけて手にした薬だったのだろう。それを病床で悟る妹も只者ではないが。

 ならばどうするのかと思いきや、妹は「祈ればきっと神様が…」と、神を信じて祈るのだ。バランも苦難に耐えるべく冷水をかぶり、「なにとぞ妹の命を!!」と荒行をするのだが、もちろん祈りだけでは助かるはずもなく妹は他界。そうしてバランは神に復讐を誓うようになる。まあ、気持ちは分からなくもないが……。

 まあ、ルセリが野盗に襲われているときに助けたのは確かにバランだ。しかし、これをルセリは「ああ 神様がわたしをお救いになりました」と言う。いや、助けたのはオレだと主張するバランに対し、「それも神の意志でしょう」という始末。う〜ん、素直にお礼くらい言えば良いのに。

 なるほど……自分がしたことを否定され“神神神神”と言われたら、バランがおかしくなってしまうのも理解できる気がする。まあ、コウケツやキスケと違い最期は改心しているから、まだマシなキャラだった。

 

 さて、卑劣な処世術を手に地位を手にしていたこの3名は、幼いリュウの反面教師として良いお手本になってくれたもの。教えるのが苦手そうなケンシロウにとっても、実はありがたい存在だったのではないだろうか。

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