『北斗の拳』(原作:武論尊氏、作画:原哲夫氏)では、“修羅の国”以降のストーリーになるとラオウの息子のリュウが登場する。ケンシロウとリュウが旅をしていくなか、まだまだ世紀末らしい卑劣な処世術を武器にする悪党たちがいたものだ。
もちろん、彼らはケンシロウの怒りを買うことになるのだが……まあ、そんなある意味たくましい敵キャラ3選を見ていこう。
■せっかく地位を築いたのにどうしようもない極悪さ…「コウケツ」
まずは、広大な土地を所有している「コウケツ」だ。コウケツは拳王軍で馬のエサ係をしていた雑兵だったのだが、ラオウが死んで平和になると“食物を武器に人を制す”ことを目的に巨大な農場を開拓し、すぐさま頭角を現した。
武力しか取り柄のない拳王軍の重鎮たちは、平穏な時代では家族を養うことができない。仕方なくコウケツに頭を下げていくのだが、コイツは完全に足元を見ており、拳王軍の重鎮だったバルガですら、奴隷のごとく強制的に働かせている。
しかもバルガに対し、彼の息子だけは助けると約束するも、農場で働かなければバルガを信じて付いてきた部下の子どもたちを飢え死にさせると言う。実際、バルガの息子をはじめ子どもたちは劣悪な環境に留められ、人質として扱われていた。なんとも卑劣なヤツなのだが、打つ手もないバルガは部下を思って耐え忍んでいたのだ。
ちなみにこのコウケツは「こうなるわけや」「バカばっかしや」と、なぜか関西弁になることがある。ぶくぶく太った体だけにまったくもって私腹を肥やしているのだが、拳王軍にいたころは馬鹿にされていただろうから、我慢してのし上がったのはまさに臥薪嘗胆だ。
まあ、その精神はお見事と言ってあげたいが、人が死んでも死体を燃やして肥料にするほどの極悪ぶり。笑い方も下品なのだが、本当にどうしようもないヤツだったな。
ケンシロウやリュウの活躍によって反乱を起こされ、結局は悪党らしい最期を迎えてしまうが、まあこれも仕方ないだろう。ここで弱者を救う精神を見せていたら、もっと崇められていたのに……。というか、馬のエサ係なら黒王号も担当していたのだろうか。こんなヤツ、よく蹴飛ばされなかったものだ。
■リンゴ1つで見事な人心掌握術! 営業向きの「キスケ」
次は、このコウケツの土地で働く男たちをスカウトしている「キスケ」だ。コイツは町で“コウケツの土地で働くといいことがある”と美味しい話を持ちかけ、大衆を扇動している。
なんとも怪しい風貌なのだが、世紀末で食糧難の民衆の前に山のような食料を用意し、「これがぜえ〜〜んぶ コウケツ様の農場でとれるんだよ!!」と、リンゴを美味しそうにかじってみせる。
要は、コウケツの土地を借りて働けば、美味しいものがいつでも食べられるし、さらに自分の家を持つことができると言っているのだ。そんなうまい話をあのコウケツが認めるわけもないのだが……。
ここでキスケは体格の良い家族持ちの男に目を付ける。しかし、この父親は今一つ信じられない様子。するとキスケは「オレが ウソを言う男に見えるのかえ〜〜!!」と言い(いや見えるけど……)、そして「この目を見なよ 目を!!」と、顔をアップにして信じさせようとする。いや、余計に怪しいだろ……。
さらに、ウソだったら丸坊主になって舌を引っこ抜くとまで断言。まあ、もちろん労働者を確保するためだけのパフォーマンスなのですべてがウソなのだが。結果、農場に一緒について行ったケンシロウに秘孔を突かれて髪の毛が抜け、舌が千切れて絶命するのだが。
まあ、このキスケもこれまでにたくさんの善良な市民を罠に陥れていたので当然の報いだろう。ただ、営業には向いていそうな気はするぞ。