■人気的にはまどかが優勢でも…?
上述のような恭介とまどかとひかるの三角関係が『きまぐれオレンジ☆ロード』の中心だ。だが、まどかが有利だと言わざるを得ない。恭介の想いはかなりまどかに寄っているうえ、ひかるに勝ち目がないのが序盤からヒシヒシと伝わるのである。
さらに言ってしまうと『きまぐれオレンジ☆ロード』といえば「鮎川まどか」なのだ。1988年の『アニメージュ』で行われた人気キャラクター投票では、まどかが上位、ひかるは圏外である。
しかしながら、読者のほとんどが「断然まどか派」と言い切るわけではないだろう。ひかるにはひかるの魅力があるからだ。
ひかるにスポットライトが当たったのは1988年に公開された劇場版『きまぐれオレンジ☆ロード あの日にかえりたい』である。監督は後にジブリで『海がきこえる』を手掛ける望月智充氏だが、この作品は原作者のまつもとさんに映画化が決定し進行していることを伝えられておらず、そのうえ原作からあまりにもかけ離れた作品になっており、まつもとさんは自身のウェブサイトで「原作から離れたパラレルワールドと考えてほしい」とコメントしている。
恭介、まどか、ひかるの三角関係がメインであることに違いはない。恭介がまどかとカップルになることも違いはない。違いとしては原作でひかるは2人の関係に対して怒りこそするものの、どこかカラッとした、軽いテンションなのに対して『あの日にかえりたい』のひかるは重い、後の言葉でいうと「ヤンデレ」っぽさがある。
恭介も原作とは違い、ハッキリとひかるの好意を拒絶する。胸が痛くなる。原作者から酷評された作品ではあるが、同作のひかるには「負けヒロイン」としての魅力が詰まっており、正道ではないヒロインの良さに夢中になった人は多かったのではないだろうか。同作はDVD化されていなかったが2021年に発売された『きまぐれオレンジ☆ロード Blu-ray BOX』に収録されている。未見の人はぜひ原作を読んだ上で鑑賞してほしい。
以上、今回は『きまぐれオレンジ☆ロード』のヒロインを紹介したが、2人とも今でも通じる魅力溢れるキャラクターであり、結論としては、まどかとひかる「どっちもかわいい」という、つまらないものになってしまう。連載開始から40年がたった今も、やはり決着がつかないテーマだろう。40周年記念ということでこれから新しく触れる読者もいると思うが、作品全体に80年代の空気が漂っており、新鮮に見えることだろう。