1981年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載が始まった、高橋陽一氏の人気サッカー漫画『キャプテン翼』が、連載43年目である今年4月に最終回を迎えることが発表された。これを受け『キン肉マン』の原作担当である嶋田隆司氏が、自身のX(旧ツイッター)にて「少し心が折れかけている」とその複雑な心境を語っている。同時期に作品が連載されジャンプ黄金期を牽引してきた高橋氏と嶋田氏、人気漫画家同士には特別な思いがそこにはあった。
そこで今回は、高橋氏と嶋田氏をはじめ、豪華すぎる漫画家同士の意外な盟友関係を紹介していく。
■切磋琢磨するライバル関係…ゆでたまご嶋田隆司氏と高橋陽一氏
『キン肉マン』ゆでたまごの原作担当の嶋田氏、そして『キャプテン翼』の高橋氏は、1960年生まれの同い年である。デビューこそ嶋田氏のほうが若干早かったが、ほぼ同時期に『週刊少年ジャンプ』で連載を開始したお二方。現在でこそお互いを友と呼び一緒に食事へ行くほどの仲であるというが、当時は少し違ったようだ。
ご存じの方も多いと思うが、『週刊少年ジャンプ』は“アンケート至上主義”と呼ばれ、毎週読者からのアンケート投票で連載漫画の人気が順位付けされるシステムになっている。『キン肉マン』が1979年から1987年、『キャプテン翼』が1981年から1988年とほぼ同時期の連載に加え、とくに2作品が掲載されていた80年代のジャンプはまさに黄金期で発行部数も右肩上がりで読者も増え、目まぐるしく順位が変わる時代だった。ゆえに、お二方に限らず当時の先生たちは、互いをライバルとしてバチバチに意識し合っていたそうだ。
2017年創刊50周年を記念した『週刊少年ジャンプ展』。そこで行われたトークショーでは、嶋田氏は「本当にギスギスしてました 今でこそ高橋君とこうやって並んで喋っていますけど、当時なんか絶対しゃべりたくなかったですもん」と、冗談交じりに当時の関係を語っている。そして“みんな競争しているから切磋琢磨があって売れたんだと思う”と、互いの重要性も語っていた。一方、高橋氏は自分よりも先にデビューしたゆでたまごのお二方を「目標だった」と語り、互いをライバルであり戦友であるとしていた。
このような関係性が見えてくると、『キャプテン翼』の終了に伴い嶋田氏が残したコメントも、実に感慨深い。
■6時間以上電話する仲…鳥山明氏と桂正和氏
『キン肉マン』『キャプテン翼』のように作品がライバル関係であれば、その担当編集者同士も意識し合い、時にはギクシャクすることも少なくないと聞く。その一方、担当者が同じだったことをきっかけに、仲良くなった漫画家先生たちもいる。『Dr.スランプ』『ドラゴンボール』鳥山明氏と『ウイングマン』『電影少女』桂正和氏がそのいい例である。
お二人の担当編集は、『Dr.スランプ』のDr.マシリトのモデルでも有名な集英社の名物編集者・鳥嶋和彦氏である。この鳥嶋氏の仲介により鳥山氏と桂氏は親睦を深め、連載当時でも毎晩のように6時間以上電話する仲になったという。
仲の良い証拠に『Dr.スランプ』では、ペンギン村の旅行客として“桂正和”というキャラが登場し、田舎者であることをかなりいじられていた。逆に『ウイングマン』では、鳥山氏の名前を使った“生徒会トリヤマ”や“Mr.マヤリト”が登場し、生徒会トリヤマは都会人を気取るキャラになっている。この誌面でのいじり合いは、仲が良いからこそできるものだろう。
さらに二人は原作を鳥山氏、作画を桂氏が担当した漫画『さちえちゃんグー!!』と『JIYAージヤー』を描いており、それらの作品を掲載した『桂正和×鳥山明 共作短編集 カツラアキラ』という共作短編集も出版している。