■「おそろしい子!」その再現度に誰もが驚いた伝説級の女優…野際陽子
その再現度に多くの視聴者が度肝を抜かれたのが、テレビドラマ『ガラスの仮面』で野際陽子さんが演じた月影先生だろう。
1975年から白泉社『花とゆめ』にて連載された美内すずえさん原作『ガラスの仮面』は、1997年から2シーズンにわたってテレビドラマ化されている。主人公・北島マヤを安達祐実さんが、そして月影千草役を野際さんがそれぞれ担当しており、特に野際さん演じる月影先生はまさに原作そのもの。右顔を髪で隠し黒いロングドレスを着た、インパクトある彼女の出で立ちはドラマではかなり異質に映りそうなはずが、野際さんが放つ雰囲気と演技によって違和感はまったくなかった。
■幕末時代のチャラ男を演じた渋めの任侠俳優…渡哲也
最後に紹介するのは、1973年より小学館『ビッグコミックオリジナル』にて連載されたジョージ秋山さんの人情時代劇漫画『浮浪雲』。本作は1990年にビートたけしさん主演でドラマ化されているが、今回は石原プロモーションが1978年に制作した渡哲也さん版を振り返りたい。
主人公・雲は女とみれば誰彼かまわず声をかけ、何者にも囚われず飄々と生きる不思議な人物。そんな雲を演じた渡さんといえば角刈りと黒のサングラスで、数多くの任侠映画や刑事ドラマなどに出演している渋く怖いイメージだ。そのため本作のキャスティングは一見アンマッチに思えるが、雲の衣装とトレードマークである前髪ちょんまげを施した渡さんの姿は間違いなく、原作漫画で読んだつかみどころがなく男前な「雲の旦那」である。
筆者も子どものころにドラマを見ていたが、着物のすそをからげて全力疾走で息子・新之助を追い回すシーンで、今までの渡さんとは違う印象を持つようになった。本作では雲の妻・かめ役に個性派女優の桃井かおりさんを起用し、こちらも独特な演技でファンを魅了した。
人気漫画の実写化はファンの期待値も高く賛否両論を集めるが、起用された俳優の演技や映像の技術により新たなファン層を獲得することも。最近ではサブスク配信により意外な作品の実写化企画も多い。これからどんな「ハマリ役」が誕生するかが楽しみだ。