1985年から『週刊少年ジャンプ』で連載がスタートした北条司氏の漫画『シティーハンター』。累計発行部数は5000万部を超えていて、令和の現在でも多くの人々から愛され続けている作品だ。
2024年には、Netflixで実写映画化されることが決まった。2015年に、上川隆也主演のパラレルワールドドラマ『エンジェル・ハート』が制作されているが、国内での『シティーハンター』の実写映画化は初めてのことである。
映画版の主演を務めるのは鈴木亮平だ。『変態仮面』など、これまでにも多数の実写化映画の主演経験を持つ演技派俳優が魅せる冴羽獠に期待が高まる。
ところで、黄金期ジャンプ世代の人はご存じだと思うが、『シティーハンター』の初実写化は1993年の香港映画だった。主演を務めたのは、なんとあのジャッキー・チェン。そこで今回は、賛否を集めた香港版『シティーハンター』を振り返ってみようと思う。
■武器必要…?アクション界のレジェンド・ジャッキー・チェン×後藤久美子の共演
『シティーハンター』はハードボイルド系漫画であり、原作でもアクションシーンは盛りだくさん。そんな作品の実写化を務めるのがジャッキー・チェンともなれば、「アクションが凄そう」と期待するものだ。実際、作中でジャッキーは派手に暴れ回っている。
ただ、この作品にはほとんどシティーハンター要素がないと言っても過言ではない。この作品を一言で表わすとすれば、シティーハンターの実写化というよりも”ジャッキーが派手に暴れまわっているカンフーコメディ”だと言えるだろう。
あらすじは至ってシンプル。ある日、冴羽獠の元に、日本のお金持ちから香港に家出した娘の捜索依頼が入る。ジャッキー扮する冴羽獠が彼女を探して豪華客船に乗り込むと、そこには悪いやつらも乗っていて……というものだ。
娘役を演じたのは後藤久美子。当時18歳だった彼女は非常に美しく、同作で唯一の癒やし要素と言えるかもしれない。
全体的に原作の世界観とはかけ離れているが、そこはさすがのジャッキー作品。『シティーハンター』として見ずに、「ジャッキーのカンフー映画」として見れば、非常に面白い作品だろう。
原作者の北条氏も2019年に公開された『映画.COM』のインタビューで、「それまでは実写化を全て断っていたが、ゴールデンハーベストからオファーがきた時にちょうど連載が終わりに差し掛かっていたので、『最後のサービス』だと思った。また、ジャッキーの映画ならば『シティーハンター』と違っても面白くなると思って受けた」と述べていた。
■賛否両論?原作からの大幅アレンジの数々
ジャッキー版の『シティーハンター』は、原作と大きく設定が変わっていた。原作はシリアスとコメディのバランスが丁度よくミックスされた作風だが、今作はシリアスな場面は少なく、全編通してコメディ要素をふんだんに取り入れた仕上がりになっている。
また、原作の冴羽獠はスイーパーという闇の職業だったが、ジャッキーの場合は私立探偵になっていた。探偵となれば、もはやシティーもハンターも関係ない。
基本的なアクションスタイルも大きく違う。原作の冴羽獠は銃のスペシャリストゆえスタイリッシュなガンアクションが見せ場の一つだったが、ジャッキーの冴羽獠はやはりカンフーによる肉弾戦がメインである。
銃を持っていても当たらないため、様々な手法で追い詰めてくる敵に対し、己の体一つでぶつかっていく肉体派の冴羽獠なのだ。
それに対してなぜか敵も拳で攻めてくるようになり、バトルが加熱すればするほど、カンフーアクション映画になっていく。
さらに、他の登場人物にも違いがあり、パートナーの香はボーイッシュなキャラではなく、ロングヘアでセクシー寄り。ただ、巨大ハンマーで追いかけ回すシーンは忠実に再現されている。