■『積木くずし』のその後も…波乱万丈な展開が待っていた
『積木くずし』は、由香里さんが更生してハッピーエンドというわけではない。実は本には続きがあり、その後の壮絶な人生が5冊の続編によって描かれている。
著者の穂積さんは『積木くずし』で多額の印税を得たのち、教育評論家としても活躍した。しかし詐欺事件に巻き込まれ財産を失い、妻・美千子さんと離婚。そして中学で一度は更生の道に進んだ由香里さんだったが、大人になってからもシンナーや薬物をやめることができず、逮捕されたりもしている。
さらに、もともと病弱だったせいもあり、実母・美千子さんから腎臓移植を受けている。しかし美千子さんはその後自ら死を選んでおり、由香里さんも腎臓移植から2年後の2003年、35歳の若さで死去している。
穂積さんは由香里さんが亡くなったとき、“積木くずしを書いたことが原因で娘を早死にさせてしまった”と後悔の念を口にした。そんな穂積さんも2018年、87歳で胆のうがんのため、この世を去っている。
映画やドラマでは、一度は親子の絆を取り戻したかのような終わり方であったが、実際にはそううまくはいかなかった。これは『積木くずし』に限った話ではないだろう。
子どもが非行に走る理由はさまざまだろうが、そうならないためにはどうしたら良いのか、そしてもしもそうなってしまったときには……と、考えさせられる。
小学生だった当時『積木くずし』を見ていたときは、ただ不良のお姉さんが暴れまくる恐ろしいドラマという印象があった。しかし大人になって小説を読み返すと、子どもの非行には夫婦関係のあり方や、子どもに対する接し方が少なからず影響するものだと実感できる。
最近では青少年の非行は減っているように見えるが、ネット依存や薬のオーバードーズなど、違う形で問題になっているのも事実だ。『積木くずし』は今の時代にも親子関係の警鐘を鳴らす貴重な小説と言えるだろう。