昭和のお茶の間を戦慄させた『積木くずし』のその後は? 実話をもとに描かれた話題作を振り返るの画像
『積木くずし〜真相 あの家族、その後の悲劇〜前編』DVD

 1980年代を中心に社会問題であった若者の非行。未成年でタバコを吸うのは序の口で、無免許でバイクを乗り回したり、シンナーを吸ったり……。当時、そんな問題を正面から捉えた本が大ヒットした。それが『積木くずし』である。

『積木くずし』は、1982年に桐原書店から出版された、穂積隆信さんによる実話をもとにした体験記である。ベストセラーとなったあとは映画化やテレビドラマ化もされ、社会現象も巻き起こした。今回はそんな『積木くずし』の凄さをあらためて振り返りたい。

■子どもにとってとにかく怖かった…『積木くずし』驚愕の内容とは

 筆者が『積木くずし』のドラマを見たのは小学生の頃。とにかく主人公の非行に走る由香里さん(ドラマ内では穂高香緒里)がシンナーを吸ったり、暴れまわる様子が怖かった。あまりの過激な内容に、親からチャンネルを無理やり変えられた記憶がある。

『積木くずし』の書籍やドラマの内容をざっくり説明するとこうだ。主人公は、筆者でもある穂積隆信さん。その娘・由香里さんは幼い頃病弱で、治療の影響もあって中学生になると髪の毛が赤く変色してしまう。学校ではそれが原因でいじめられてしまい、由香里さんは徐々に非行に走っていく。

 不登校や家出を繰り返しては悪い仲間とシンナーや窃盗、集団暴走行為などをしてしまう由香里さん。それを諭す親に対しても凄惨な家庭内暴力を加え、由香里さんの非行は時間を追うごとに激しさを増していった。

 それまで子育てを妻に任せきりにしていた穂積さんは反省し、警察やカウンセラーに相談しながら全力で娘と向き合っていく。そうすることで由香里さんは徐々に更生への道を歩み始める……という話だ。

 本作は娘の非行という極限状態のなか、手探りで娘の将来や家族の幸せを取り戻していく作品だ。

■ドラマや映画では有名俳優たちがキャスティングされ話題 

『積木くずし』は1983年から翌年にかけて、東宝系列でテレビドラマ化、映画化、舞台化されている。なかでも最初のテレビドラマであったTBS系列の『積木くずしー親と子の200日戦争ー』は高い視聴率を獲得した。

 父親の穂積さんを演じたのは前田吟さん、母親役は小川真由美さん、そして娘の由香里さん(ドラマ内では香緒里)を演じたのは欽ちゃんファミリーとして知られる“わらべ”の高部知子さん(当時15歳)だ。ドラマは大ヒットし、最終回の視聴率はなんと45.3%を記録している。

 そして東宝映画の『積木くずし』は父親役を藤田まことさん、母親役をいしだあゆみさん、そして由香里さん(映画内では穂波由布子)を演じたのは渡辺典子さんと、こちらも豪華なキャスティングだ。本作はこのほかにも“最終章”などとして、その後も違うキャストで何度もドラマ化されている。

 ドラマも映画も、非行に走って暴れまくる由香里さんの姿がとにかく印象的だ。とくに母親に向かっての暴力は凄まじく、“クソばばあ”などと罵倒しながら髪の毛を引っ張る、床に張り倒す、蹴るといった凄惨なシーンがある。

 多少誇張している部分もあるかもしれないが、当時の非行少年・少女たちのなかには親に対しても暴力を振るう場合もあったようで、大きな社会問題になっていた。

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