■死してなお皆を導く偉大なる“指導者”…『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』タルキン
1991年から『月刊少年ガンガン』(エニックス 現:スクウェア・エニックス)にて連載された『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』は、国民的人気RPG『ドラゴンクエスト』の世界観をベースに描かれたファンタジー漫画作品だ。
原作・設定を川又千秋氏、脚本を小柳順治氏、作画を藤原カムイ氏が担当し、ゲームでは描かれなかった新たな『ドラクエ』の世界が展開される本作。
主人公・アルスは数々の仲間たちとともに魔王軍との戦いを繰り広げていくのだが、アルスらの道を切り開くために命を懸けたのが、彼の親代わりとして活躍した老子・タルキンだ。
アルスたちからは「老子さま」と呼ばれる存在で、パーティの最年長者として一同を導く好々爺。少々スケベな一面もあるが、一方でその戦闘力はかなりのもの。ゲームでもおなじみの「ホイミ」「バギ」「フバーハ」といった数々の呪文を使いこなす。
良き指導者として活躍していたタルキンだが、獣王・グノンが率いる「獣(ビースト)兵団」との一戦が、彼の運命を大きく変えてしまう。
連日連夜、激戦を繰り広げたことで心身ともに追い詰められていくアルスたち。そこでタルキンは、この状況を打破するために決死の一手に出る。彼は全身に“聖水”をふりかけモンスターたちを退けながら、敵大将であるグノンのもとへ到達。
その意図を察したアルスたちの制止を振り切り、自爆魔法「メガンテ」によって獣兵団を吹き飛ばし、死亡してしまうのだ。
この決死の特攻もグノンには通じなかったのだが、彼と仲間であったモンスターたちの死が、仲間の一人・ポロンを“賢王”として覚醒させることになる。
生前の活躍はもちろんのこと、死してなお仲間たちが成長するきっかけとなった、まさに“指導者”と呼ぶにふさわしいキャラクターだ。
“自爆”とはまさに命懸けの行為であり、一人のキャラクターの命が散ってしまう描写は、いずれも壮絶なものとなっている。それゆえに、彼らが命を懸けて道を切り開こうとするその姿に、登場人物たちはもちろん読者までも強く心を震わされてしまうのだろう。