バトル漫画では戦闘能力こそ低いものの、己の命を懸けた“自爆”によって主人公たちの活路を切り開いたキャラクターたちが数多く登場している。その気高い意志を読者に見せつけたキャラクターたちについて見ていこう。
■仲間のために最後まで奮闘した小さき戦士…『ドラゴンボール』餃子（チャオズ）
１９８４年から『週刊少年ジャンプ』（集英社）で連載された鳥山明氏の『ドラゴンボール』は、今もなお続編やアニメ、映画が展開され続けている国民的人気作品だ。
主人公・孫悟空をはじめ、数々の猛者が登場する本作だが、バトルが苛烈になっていくにつれ死者が出ることも多く、登場人物が途中退場してしまう場面も少なくはない。
そんななか、己の命を懸けた“自爆”を見せたキャラクターといえば、第２２回天下一武道会で初登場した餃子（チャオズ）だろう。亀仙人のライバルとして登場した鶴仙人の弟子の一人で、小柄で真っ白な顔をした“ベビーキョンシー”を彷彿とさせる姿が特徴だ。
超能力を活用したトリッキーな戦法を得意とし、“舞空術”はもちろん鶴仙流の技である“どどん波”といった遠距離攻撃も会得している。
のちに孫悟空らの仲間として活躍するチャオズだが「サイヤ人編」において、彼の運命を決定付ける出来事が起こってしまう。ベジータとともに地球に襲来したナッパを相手に激闘を繰り広げる仲間たちだったが、そのさなかにチャオズにとって相棒ともいえる戦士・天津飯が片腕を失う大怪我を負う。
それを受け、チャオズは一瞬の隙をついてナッパの背中に張り付く。驚く天津飯に向けて「さようなら 天さん…… どうか死なないで」の一言を残し、チャオズはフルパワーを解放して“自爆”してしまうのだ……。
仲間の窮地を救うための決死の行動だったが、残念ながらナッパには致命的なダメージを与えることはできなかった。しかし、チャオズのこの死を受け、天津飯もまた命を燃やした“気功砲”を叩き込み、ナッパに対して一矢報いることができた。
その実力はサイヤ人の戦闘能力には遠く及ばなかったものの、命を賭した行動で仲間の気持ちを奮い立たせたその健気な姿は、作中屈指の名シーンとして読者の心に鮮明に刻まれている。
■すべては父の悲願のため…『北斗の拳』シバ
『週刊少年ジャンプ』（集英社）では数多くのバトル漫画が連載されてきたが、１９８３年より掲載された『北斗の拳』も忘れてはいけない名作の一つだ。
原作担当の武論尊氏と、作画担当の原哲夫氏の強力タッグが描き出す“世紀末”を舞台にした格闘漫画で、荒廃した世界のなかで主人公・ケンシロウをはじめ、さまざまな猛者たちが戦いを繰り広げていく。
バイオレンスな展開が多い本作では、非業の死を遂げてしまうキャラクターも数多く登場するのだが、なかでも己の命を賭してケンシロウの活路を切り開いた印象的なキャラクターといえば、南斗白鷺拳伝承者・シュウの息子として登場したシバが挙げられる。
聖帝・サウザーによってケンシロウが捕縛されてしまうなか、シバは単身地下牢へと潜入し、見張りを倒しケンシロウを救い出す。しかし、満身創痍のケンシロウを連れたシバに、容赦なく迫っていく聖帝部隊。
幼いゆえに悪漢を撃破するだけの力も技も持たないシバは、それでもケンシロウを逃がすために己の命を投げ出す決意を固める。そして彼は“ダイナマイト”に火をつけ、自らの体ごと追っ手たちを爆破してしまうのだ。
すべては、ケンシロウが「聖帝・サウザーを倒せる唯一の男」であるという父の言葉を信じての行動だった。シバのこの奮闘により、ケンシロウは生還。再びサウザーのもとへと向かい、彼との再戦に臨むことができた。
子どもでありながら父から受け継いだ“使命”を全うしようとするその行動力に、思わず圧倒されてしまう。
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