■ヘルメットの下にマスクという意外性…『ファミリーサーキット』ホッケーマスクのレーサー

 80年代から90年代にかけ、巷では空前の“F1ブーム”が巻き起こっていた。これを受けてファミコンにも数々のレースゲームが登場しているが、1988年にナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)から発売された『ファミリーサーキット』も、シンプルかつ丁寧な作りがうりのレースゲームだ。

 高い操作性や攻略の奥深さはもちろん、マシンセッティングによって操作する車体をオリジナルのものにカスタマイズすることもでき、ブースト圧、ギア比、エンジンブレーキといった計6項目を調整し、自分好みのマシンを作ることができるのは面白い点だろう。

 そんな本作のパッケージだが、レースマシンを取り囲むように配置されたレーサーやその仲間たちの集合イラストが採用されている。

 その様子からおそらく“ピットイン”の最中だということが伝わってくるのだが、この陽気なイラストのなかで、とある人物に思わず目が惹かれてしまう。

 それは、マシンの背後に立ちこちらを見つめる、黄色のつなぎを身に着けた人物。

 ヘルメットを抱えていることから彼がこのマシンのレーサーであることは想像できるのだが、問題はその顔。なぜか彼は素顔を見せないよう、目だけに穴が開いた“ホッケーマスク”のような仮面を被っているのだ。

 仮面越しにこちらをじっと見つめる姿はどこか異様なのだが、よく見るとピットインしているスタッフもなぜか赤いマスクで目の周囲を覆っていたりと、全体的にイラストの癖が強い。

 また、ソフト本体のイラストには、ポニーテールの女性が黄色のコスチュームでヘルメットを持っていたりと、統一性がないのも混乱のもととなっている。

 レーサーであろう彼は、なぜヘルメットの下にマスクをつけようと思ったのか……シンプルなレースゲームでありながら、謎多きパッケージを持つ一作である。

 

 パッケージのイラストはゲームの世界観を伝える重要な要素だが、ときにそこには作中に登場しない“謎の人物”が描かれ、プレイヤーたちの間で物議を醸すこととなった。

 その正体は主人公のイメージだったり、まさかのラスボスだったり……深掘りしてみると、意外な事実が見えてくるのは面白い点だろう。

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