分かりにくい? 最強ニュータイプ、洗練されたメカデザイン…いま再評価したい“過小評価”されがちな『機動戦士ガンダムF91』の魅力の画像
U.C.ガンダムBlu-rayライブラリーズ『機動戦士ガンダムF91』より

  BS12(トゥエルビ)の「日曜アニメ劇場」にて、12月17日に『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』が、翌週12月24日に『機動戦士ガンダムF91』がそれぞれ19時から放送される。ともに富野由悠季監督によるオリジナル長編劇場版アニメで、テレビアニメ『機動戦士ガンダム』に続く宇宙世紀シリーズの作品。年末の日曜のゴールデンタイムに、ガンダム映画が見られることを楽しみにしている人も多いだろう。

『F91』は、新興コロニーに「クロスボーン・バンガード」のモビルスーツ部隊が侵入したことをきっかけに、主人公シーブック・アノーが母親が開発に携わった新型MS「ガンダムF91」に乗り込み戦いに身を投じていく、宇宙世紀0123年を舞台にした物語。1991年に公開された『ガンダム』のオリジナル劇場版第2弾となる同作だが、もともとはテレビシリーズとして作られるはずだったストーリーを映画としてまとめたため、たびたび「わかりにくい」と評価される作品でもある。

 では不評であるかといえば決してそうではなく、同作で描かれる表現や描写、キャラクターなどについて、現在でも高く評価する声は多い。今回は『F91』のファンである筆者が、あらためていくつかの視点から同作の魅力を振り返ってみたい。


※以下には、アニメ『機動戦士ガンダムF91』の一部内容が含まれています。ストーリーを解説するのが本記事の主目的ではありませんが、気になる方はご注意ください。

■アムロを上回る脅威の初陣? 劇中の活躍を見る

『ガンダム』シリーズを語る中で、「誰が最強のニュータイプパイロットなのか」という話題がよく挙がる。アムロ・レイを筆頭にカミーユ・ビダンやジュドー・アーシタ、ウッソ・エヴィンが上げられるが、本作主人公のシーブック・アノーがエントリーされることは珍しい。

 アムロやウッソが強いのはもちろんだが、ではシーブックは弱いのかといえば、そんなことはない。むしろアムロに匹敵するポテンシャルを秘めている。

 まずは、初陣を見てみよう。アムロの初陣は、マニュアルをパラパラと眺めただけでガンダムを起動し、そのままザクIIを2機撃墜してしまうという凄まじいものだったが、シーブックも負けず劣らず。フロンティア学園機械科の生徒だったシーブックは、モビルスーツの操縦が初めてにもかかわらず、いきなりクロスボーン・バンガードのMS部隊と対峙し、相手の発射したグレネードを回避し、シールドで防御する技術も見せた。

 さらには回避行動後、即座に反撃し、敵モビルスーツのデナン・ゲーとデナン・ゾンをビームライフル1発で同時撃破、いわゆる「2枚抜き」している。アムロと同等かそれ以上の技術、判断力を持っていることは想像に難くない。

 そうして初陣から見事な才能を見せたシーブックだが、彼の操縦技術が光ったのは、本作のクライマックスであるカロッゾ・ロナが乗るモビルアーマー「ラフレシア」との戦闘だろう。

 ラフレシアは名前のとおり花をかたどったモビルアーマーで、地球連邦艦隊を単機で全滅させるほど強力な能力を有している。しかし、シーブックはF91の能力を最大限に発揮し、ほぼ単機でラフレシアを撃墜している。恐ろしいことに、シーブックがラフレシアを撃墜したのは、初陣からわずか2週間後だったということ。

 F91に搭載されたバイオ・コンピュータがシーブックに適応したとはいえ、「偉業を成し遂げた」と言っても差し支えないこの戦果。歴代シリーズを振り返っても、類まれなるシーブックの非凡な能力をはっきりと示していると考えられる。

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