■30年前とは思えない!洗練されたメカデザイン

 同作のメカデザインは洗練されており、そこに魅力を感じるファンも多いはず。まずピックアップしたいのは、やはり主人公機であるF91。頭部のVアンテナ、トリコロールカラーなどの基本は共通しているが、全体的に鋭さを感じるデザインは30年前のものとは思えないほどかっこいい。さらに、フェイスオープンや質量のある残像などのギミックもワクワクする。

 だが、個人的にメカデザインが好きなのは、むしろクロスボーン・バンガード製のメカ。地球連邦軍の量産機はジムやジェガンを正統進化させたものだが、敵機のデザインはザクやドムと違って独特だ。丸いゴーグルをかけたようなデザインは、恐怖感を演出している。また、主兵装がランス(槍)状な点もおもしろい。クロスボーン・バンガードは貴族主義の思想を掲げる集団であるため、貴族社会が多かった中世=ランスのイメージを感じたのは筆者だけだろうか。

 劇場用アニメ『機動戦士ガンダムF91』が「わかりづらい」と言われるのは、そもそもテレビシリーズの先行上映として制作され、その後に続くテレビシリーズで完結する予定だったためだろう。しかし、結果としてテレビシリーズは制作されず、あらゆる点で説明が不足している。つまり、本作は未完成なのである。

 そして、シーブックを演じた辻谷耕史さんが他界しているため、オリジナルキャストでの完成は叶わぬ夢となった。辻谷さんは、1989年にOVA展開された『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』で、バーニィことバーナード・ワイズマン役で出演している。2018年に急逝した際は、当作の第5話サブタイトル「嘘だと言ってよ、バーニィ」が引用され、ファンに追悼された。

 辻谷さんの声でのアニメの完結や、シーブックのその後を描く漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム』の映像化は叶わぬが、ファンとしては今後も何かしらの展開を期待したいところだ。

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