■『ジェニーの微笑』など名作短編ホラーを生み出した曽祢まさこさん

 繊細で可愛らしい絵柄が印象的な、曽祢まさこさんの短編作品たち。ホラー漫画とは思えないほど美しい登場人物と恐ろしい形相の怪異や狂気に染まった人の表情のギャップ、ゾクッとくるストーリー展開の描き方が素晴らしく、読めば読むほど惹き込まれてしまう。

 たとえば、1981年に『なかよし』に掲載された『ジェニーの微笑』は印象的だった。同作は、人形のように可愛いがわがまま三昧なジェニーが主人公。彼女はある日、自分そっくりな人形「リトルジェニー」をもらう。

 成長につれ顔が美しくなる反面、性格は醜くなるジェニー。自分よりも秀でた才能を持つ人に次々嫌がらせをすると、それに比例して人形の顔もどんどん醜くなっていく。気持ち悪くなったジェニーが人形を火にくべると、自分の顔も人形のように醜くなってしまう……というシニカルなホラー作品だ。

 ほかにも、幼い頃に自分の中に芽生えた憎悪が7年の時を経て怨霊となって目の前に現れ、怪異を引き起こすオカルトゴシックロマン『七年目のかぞえ唄』など、人の心の闇が引き金となって恐怖体験に繋がるストーリーが読み応え抜群だった。

 80年代〜90年代の少女向けホラー漫画は綺麗な絵の作品が多いため、怖い話が苦手な少女たちでも入り込みやすかった。今では希少になってしまった作品も多々あるが、チャンスがあればまたあの頃のゾクゾク感を体験したいものである。

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