■勇次郎も翻弄した“神の子”だったのに…『バキ』マホメド・アライJr.

 次は本格格闘漫画のレジェンド『グラップラー刃牙』シリーズ(板垣恵介氏)から、マホメド・アライJr.をふり返ろう。

『バキ』第159話で初登場したアライJr.は「神」になったとまでいわれる偉大なボクサー、マホメド・アライの息子だ。その実力は確かなもので“地上最強の生物”・範馬勇次郎を翻弄し「中国大擂台賽編」で凄腕の中国拳法家を相手に圧勝するなど“神の子”にふさわしい活躍を何度も見せた。

 だが、アライJr.が範馬刃牙に挑むまでを描く「神の子激突編」に入るや否や、それまでの好調が一変する。愚地独歩、渋川剛気、ジャック・ハンマーら地下闘士に立て続けに負けまくり、ついには引退して久しい父親にも苦汁をなめさせられる。

 それでも不屈の精神で這い上がり、目標だった刃牙との対戦に挑むアライJr.。そこで彼を待っていたのは、強烈な右ブローからの金的、そしてヘッドロックで倒されるという、あまりに悲惨な完敗だった。

「中国大擂台賽編」までの快進撃がウソのような瞬殺っぷりに、筆者も当時は唖然としたものだ。試合後にアライJr.はみっともなく号泣していたが、それもやむなしである。

『バキ』シリーズは現在、『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で『刃牙らへん』を連載している。はたしてアライJr.の再登場、そしてリベンジはあるのだろうか? 一読者としては、もう一花咲かせてほしい……。

 

「かませ犬」は縁の下の力持ちだからこそ、あまり顧みられない役回りといえる。しかし今回紹介したキャラのように、その負けっぷりが印象的ならば私たち読者の記憶に残り、こうして語られることも少なくない。

 瞬殺されたことで物語の礎となった彼らは、勝敗を超えた魅力を持っているのだ。

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