バトル漫画には、強者として登場したのにあっさり負ける「かませ犬」と呼ばれるキャラがいる。その敗北をもって主人公や新たな強敵の力をわかりやすく伝えてくれる彼らは、ストーリーを盛り上げる縁の下の力持ちだ。
しかし、なかにはあまりにも呆気なくやられすぎて、「なんだったんだ……」と、読者に困惑されてしまうキャラも少なくない。しかし、そんなキャラはただの負け役の枠を超え、誰もが忘れられない唯一無二の存在になったりするものだ。
この記事では、そんな愛すべき“瞬殺された”キャラたちを紹介しよう。
■「ゾルディックに対抗できる」前評判も…『HUNTER×HUNTER』“団長の手刀を見逃さなかった人”
まずは冨樫義博氏の『HUNTER×HUNTER』(集英社)でカルト的な人気を誇る“団長の手刀を見逃さなかった人”だ。やけに遠回りな表現だが、なにせ彼は本名はおろか偽名も通称もないため、こう呼ぶしかない。
“団長の手刀を見逃さなかった人”は、クラピカと幻影旅団の衝突を描くヨークシン編で登場し、クラピカとともに幻影旅団抹殺のため行動する。
この第95話ではクラピカをして、“シルバ=ゾルディックとゼノ=ゾルディックになんとか対抗できそう”と、評価されているのがすごい。シルバとゼノはこの時点の『H×H』で文句なく最強格のキャラだ。その2人に対抗できる……間違いなく実力者である。
第96話では監視カメラでは捉えられなかったクロロ=ルシルフルの手刀を見抜き、その実力を証明。名言(迷言?)「おそろしく速い手刀 オレでなきゃ見逃しちゃうね」を残し、いよいよクロロと1対1の殺し合いに挑んだ。「仲間だ お前は…オレと同じ 殺人中毒者」と言っており、いかにも“デキそうな感じ”を醸し出していた。
しかし、第97話冒頭にて、男は体中をクロロの「密室遊魚」に食いちぎられた敗者の姿を見せる。前話まではとても余裕そうに振る舞っていたのに、半狂乱で「何故 オレはまだ生きてるんだ!?」と叫ぶ落差たるや……。
戦闘シーンすら描かれずクロロに瞬殺された、”団長の手刀を見逃さなかった人”。クラピカの見立てからして間違いなく強かったのだろうが、さすがに相手が悪かった。
■あの圧倒的ラスボスがまさかの…『ドラゴンボール』メカフリーザとコルド大王
ヤムチャや天津飯など、かつての強敵がインフレに置いていかれる展開が多い鳥山明氏の『ドラゴンボール』(集英社)。そのなかでも印象的なのは、やはり「人造人間・セル編」冒頭のメカフリーザとコルド大王ではないだろうか。
ナメック星でかろうじて一命を取り留めたフリーザは、復讐のため自らをサイボーグと化し、地球への侵略を開始する。その隣にはフリーザの父親・コルド大王の姿もあった。
「フリーザ編」であれだけ苦戦したフリーザが復活し、さらに父親まで連れてきた。しかも悟空は不在だ。この状況を前にベジータは「これで地球は終わりだ」と力なく笑ったが、読者も同じ心境だった。勝てるわけがない。
しかし、地球に降り立ったフリーザとコルド大王の前に、未来からやってきたトランクスが立ちはだかる。超サイヤ人に変身したトランクスは剣でフリーザを細切れにし、コルド大王もエネルギー弾1発で倒してしまう。ナメック星で恐るべきラスボスを演じたフリーザの最期とは思えない瞬殺劇である。
メカフリーザとコルド大王の戦闘シーンはページ数にして20ページ足らず。2人目の超サイヤ人登場も重なった衝撃的な急展開に、興奮と混乱が止まらなかった人も多いのではないだろうか。