■天賦の才の持ち主
さて、ジュウザと慶次には、人よりも恵まれた武の才能を持っているという共通点もあった。体格もそこまで大差はなく、ジュウザが183cm99kg、慶次が190cm90kg(原作)となっている。
ジュウザは変幻自在な我流の拳を扱い、あのラオウを困惑させ黒王号から降ろすほどの実力を持っていた。一子相伝の北斗神拳には力で及ばないが、リュウケンは「ラオウ・トキと同等の才能を持つ」と称している。ラオウにもその拳を認められ、死後丁重に埋葬までされているほどだ。
「虎はなにゆえ強いと思う?もともと強いからよ」のセリフが有名な慶次もまた、恵まれた体格と秀でた武芸の才能を持っていた。愛馬・松風の上で長い槍を振り回し、向かい来る敵をバタバタとなぎ倒していく様はまさに鬼神の如く。「負け戦こそおもしろい」と考える慶次は、難しい局面でも怯むことなく皆に発破をかけ勝機を生み出していった。
ただ、持って生まれた才能があったとしても、血のにじむような鍛錬を積まないことには強敵たちと渡り合えるだけの力は手に入らない。ましてやジュウザは、我流でラオウにも届く拳を築き上げている。両者ともに努力をしている姿が描かれることはなかったが、人知れず才能に磨きをかけてきたのではないだろうか。
■ゆるさと熱さの絶妙なギャップ
「普段はダラダラしているのにやる時はとことんやる」。現実世界でも漫画の世界でも、その差がある人ほど人々の心を掴みやすい。ジュウザと慶次は、そんな「ギャップ萌え」の典型的なキャラではないかと思う。
二人は、周囲が慌ただしくなっても自分がよしと思わなければ基本的に動かない。普段の立ち振る舞いだけ見れば、チャラさや適当さも目立つ。ジュウザは綺麗な女性がいればすぐに口説くし、慶次はこのタイミングで? という場面でも酒を飲んでどんちゃん騒ぎをしたりもする。
その代わり、決意が定まればそれまでの緩さは一切なくなり、戦だろうが人助けだろうがとことん真剣に向き合うのだ。たとえ相手が自分の手に負えない強さの持ち主だとしても、そこにはいささかの躊躇もない。大ピンチが訪れても諦めず、命を張ってまでも筋を通すのである。
ジュウザと慶次は、生きる目的や背負っている運命も全く違う。しかし、振り返ってみれば共通点も多かったのではないか。いずれにせよ、どんな時でも自由奔放に自分の道を突き進む二人には「格好いい漢」の言葉がピッタリだ。