誰にも縛られない…男が憧れる男『花の慶次』前田慶次と『北斗の拳』雲のジュウザから見える共通点の画像
ゼノンコミックスDX『花の慶次-雲のかなたに-新装版』第1巻(コアミックス)

 1983年から連載が始まった『北斗の拳』と1990年から連載が始まった『花の慶次 -雲のかなたに-』。どちらも、原哲夫氏が描く魅力的なキャラクターたちが数多く登場する作品だ。

 原氏はキャラデザインの際に実在の俳優をモデルにすることがあると公言しており、たとえば『北斗の拳』の主人公・ケンシロウは松田優作やブルース・リーなどを参考に作り上げたキャラクターだという。『花の慶次』の主人公・前田慶次については、2017年7月に行われたイベント「花慶の日2017 超KABUKI祭」でモデルとなった人物を明かしており、「前田慶次のモデルを考えていた時、北斗の拳のジュウザが浮かんだ。彼のイメージを元に笑顔が似合う漢を作っていった」と意外な誕生秘話を語った。

 たしかに、前田慶次とジュウザは生い立ちや人生観は違えど似ているところもある。そこで今回は、両者に見える共通点を考えてみようと思う。

■誰にも縛られない自由な心と芯の強さ

『北斗の拳』のキャラの中でも、トップクラスの人気を誇る「雲のジュウザ」というキャラクター。本編にはわずか9話しか登場していないにも関わらず、彼のキャラクター性は一瞬にして読者の心を掴んだ。

 ジュウザを一言で表現するなら破天荒で自由気まま。誰の言葉にも左右されず誰の行動にも流されず、自分の感性、自分の心のみを信じて生きている。反対に、誰かに自分の考えを押し付けたりコントロールしようとしたりもしない。

 一方の『花の慶次』主人公・前田慶次も破天荒で自由気ままだ。松田慎之助に「慶次どのはいいなあ 好きなときに寝 好きなときに起き 好きなことだけをして死ぬんだ」と言われるほどだった。

 しかし、慶次は「だがその自由も野たれ死にの自由と背中合わせだがな」というセリフからもわかるように、自分の運命や立場、「自由」の代償が何なのかを理解している。ジュウザもそうだろう。その上で誰にも従わず自分がしたいことをやる、これがどんなに難しいことか。

 二人が生きたのは、常に死と隣り合わせの過酷な世界。そんな中、「南斗五車星」「いくさ人」としての宿命を背負いながらも、自分の人生を自分の信念に忠実にとことん楽しんでいた。“宿命”や“時代の流れ”に翻弄される登場人物が多い中、我が道を生きたこの二人に憧れる人が続出したのも頷ける。

■度胸がありいつでも笑顔を湛える

  冒頭で述べた原氏の発言にもあるように、ジュウザと慶次の共有点といえば笑顔が外せないだろう。二人を思い起こすと、多くの場面で口元に笑顔をたたえていた。特にジュウザは笑顔のイメージが強く、命が尽きるときまでその顔には笑顔が浮かんでいた。

 通常であれば恐怖や緊張で顔が強張るような場面で予想外の行動を取る肝っ玉の大きさも、二人の共通点だ。たとえばジュウザは、ラオウをおしりペンペンでおちょくってみたり、秘孔を突かれながら「拳王のク・ソ・バ・カ・ヤ・ロ・ウ」といってみたりと、あえて神経を逆なでするようなことをしている。

 一方の慶次も、天下人・秀吉への謁見の際に髷だけひれ伏して顔はそっぽを向いたり猿芸をしたりと、命懸けの大傾奇を見せた。おちゃらけた態度に潜む慶次の殺意に気づいた秀吉から「なぜ」と問われ、「人としての意地でござる!」と言い切る姿も、まさに大傾奇者。 

 圧倒的な強者であり格上の存在に挑む緊迫の瞬間なれど、臆することもなくどこか余裕さえ見せながら最後まで自分のスタイルを貫いた二人。ラオウと秀吉から「敵ながらみごとであった」「大儀であった!!」という最大級の賛辞を受けるのも納得だ。

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