血縁関係のない母娘の絆を描いた桜沢鈴氏の漫画『義母と娘のブルース』。反発しあいながらも次第に信頼と愛情で結ばれた家族になっていく主人公たちの姿は多くの読者の心を掴み、2018年にはTBS系列で実写ドラマが放送されるほど人気の作品となった。
ここ数年は正月にスペシャルドラマが放送されていたが、2024年1月2日放送の『義母と娘のブルースFINAL 2024年謹賀新年スペシャル』でついにラストを迎えることが発表されている。
そこで今回は、『義母と娘のブルース』のように血の繋がりはなくとも本物の家族以上に強い絆を育んだ母娘と義母の愛が描かれた作品にスポットライトを当ててみようと思う。
■号泣必至!子どもたちのために命を張ったベルメール
まずは尾田栄一郎氏の漫画『ONE PIECE』より。東の海(イーストブルー)編で描かれたベルメールのエピソードは、涙無しでは見られない名場面だろう。
ナミとノジコは血の繋がりがない戦争孤児だった。海兵として戦場に赴いていたベルメールは、激しい戦火の中でそんな2人に出会い、母として育てることを決意する。
ココヤシ村でミカン農家になったベルメールたちは貧乏ながらも幸せな生活を送っていたが、アーロン一味に村を襲撃された日に悲劇は起こった。村を支配したアーロンは大人一人10万、子ども一人5万ベリーを要求したが、ベルメールの全財産は10万ベリーしかなかったのだ。
ナミたちの存在は知られていないため、駐在のゲンゾウはベルメールに自分の分だけ払ってナミたちを逃がすよう促すが、ベルメールはアーロンに「それは私の娘達の分」と娘の存在を伝えてしまう。
その際に涙を流しつつ笑顔を浮かべて言った「たとえ命を落としても…!! 口先だけでも親になりたい あいつら…私の子でしょ?」というセリフは、名言の一つだろう。
ゲンゾウたちはベルメールを助けるために立ち向かうが、魚人に敵うはずもない。ベルメールは「ノジコ!! ナミ!! 大好き」の言葉を最後に見せしめとしてアーロンに殺されてしまうのである。このシーンは、今思い出しても胸が痛くなってしまう。
「人に褒められなくたって構わない!いつでも笑ってられる強さを忘れないで…生き抜けば必ず楽しいことがたくさん起こるから…!!!」など、数々の金言をナミたちに残したベルメールは、血よりも濃い絆を読者に見せてくれた。
■数奇な運命を生きた愛の人ニコール・ラ・モリエール
池田理代子氏による漫画『ベルサイユのばら』に登場したロザリーの義母・ジャンヌの実母である、ニコール・ラ・モリエール(原作ではラ・モリエール)の人生は、愛と悲劇に満ちていた。
子どもたちの父親はバロア家のサン・レミー男爵。彼はポリニャック夫人と女中だったラ・モリエールに手を出し、ラ・モリエールにはジャンヌを、ポリニャック夫人にはロザリーを身籠らせたのだ。
若かったポリニャック夫人はロザリーを手放すが、ラ・モリエールはロザリーを引き取り、パンくずしか食べられないような貧困生活の中懸命に子どもたちを育てた。
しかし、貴族に憧れる気の強い実娘ジャンヌは貧困生活に耐えられず、王宮暮らしを手に入れるため家を飛び出してしまう。ラ・モリエールはジャンヌが家を出てからも事あるごとに彼女を気にかけていたが、結局最期まで会えていない。
さらに、生活は裕福にならない上にラ・モリエールは体を壊し、次第に立つことすらままならなくなっていく。と、この時点で胸が苦しくなるような人生なのだが、ある日外を走っていた貴族の馬車の前に飛び出して轢かれるという事故にあってしまう。
最悪なことに、馬車に乗っていたのはポリニャック夫人だった。このときロザリーに対して放った「もんくがあったらいつでもベルサイユへいらっしゃい」は、彼女の代表的なセリフである。
命が尽きる直前、ラ・モリエールはロザリーに本当の母のことを明かした。「愛する母を殺した相手が実の母」という事実は、ロザリーにとって耐えられないほど苦しい事実だっただろう。血の繋がりはなくとも母親想いだったロザリーは、母への復讐を胸に誓い、貴族への憎悪を募らせた。