■70年代少女漫画に多かった激情シーンが満載『デザイナー』
『デザイナー』は、一条ゆかり氏によるファッション界を舞台にした作品だ。主人公の人気モデル・亜美が不慮の事故をきっかけにデザイナーに転身し、ライバルでもある生みの母と熾烈な戦いを繰り広げるストーリー。
本作では“結ばれない愛”もテーマとなっているのだが、亜美が愛した青年実業家の結城朱鷺にもとある問題があった。そうとは知らず愛し合う2人。朱鷺が亜美にささやく言葉も情熱的で「貴女は咲きほこるバラになる人です そんな貴女を見ているのがとても好きです」「女王様にキスを—」と言い、亜美にキスをする。
一方の亜美も朱鷺への想いが強く、周囲によって別れさせられたあとは「もうひとりでなんて歩けない 行く所などどこにもない」「朱鷺の所以外 行く所などどこにもない」と、自身を抱えながらむせび泣き、絶望するのであった。
本作には“出生の秘密”、“許されない愛”、“想いの通じ合えない男女”といった数々の要素が詰まっており、ところどころに情熱的なポエムシーンが登場する。70年代の少女漫画に多かった激情シーンを、じっくり堪能できる作品だ。
今回紹介したポエムのような情熱的なセリフを、実際に口にするのは難しいだろう。しかし昭和の少女漫画は美しく、独特のノスタルジックな雰囲気があることから、愛情あふれるポエムのようなセリフもまったく違和感がない。
普段口にできないような熱いセリフが楽しめるのも、昔の少女漫画の良さと言えるだろう。