『ベルサイユのばら』や『デザイナー』にも…あまりにも情熱的! 昔の少女漫画に登場する“好きな人を想うポエムなシーン”の画像
フェアベルコミックス『ベルサイユのばら』第8巻(フェアベル)

 少女漫画には欠かせない恋愛シーン。最近の少女漫画では静かに相手に歩み寄り、見つめ合うといったシーンも多い。セリフよりも、描写力でその場の雰囲気を表しているのが印象的だ。

 対して、昭和の少女漫画はかなり情熱的だったように思う。相手への気持ちをたくさん表現し、今では恥ずかしくなるようなセリフを堂々と口にする。

 シェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』では「おおロミオ、ロミオ。あなたは何故ロミオなの?」という有名なセリフがあるが、昭和の少女漫画もそれに負けずとも劣らない熱いセリフが続々登場しているのだ。

 今回は昔の少女漫画から、思わず胸が熱くなる好きな人を想うポエムなシーンを紹介する。

■情熱的なセリフといえばこの作品『ベルサイユのばら』に登場するポエムなシーン

 池田理代子氏の『ベルサイユのばら』は、少女漫画のなかでも情熱的な恋愛の場面が多く描かれている。本作には多くのカップルが登場するが、どれも相手を想う気持ちには強い情愛がほとばしっている。

 まずは仮面舞踏会で出会った、フランス王妃のマリー・アントワネットと、美しい貴族、ハンス・アクセル・フォン・フェルゼンとの恋愛だ。王妃と貴族の許されない恋愛ということもあり、両想いなのに近づけない2人……。

 アントワネットがフェルゼンを想うとき、「このからだじゅうがぜんぶ目となって あなたの姿だけをおっているのに…!!」「もうこんなにまで あつく燃えあがってしまったこの胸を どうやってしずめろというの…!?」と、烈烈たる気持ちを涙ながらに口にしている。

 そして、『ベルばら』最大の人気カップル、主役・オスカルと幼馴染のアンドレも熱い。

 最初のころは報われない想いを抱えていたアンドレ。オスカルに対する気持ちは全身全霊であり、「守ってやる あ…あっ! 守ってやる きっときっと この命のつきるまで!」「ああ…愛している 死んでしまいそうだよ」など、熱烈な気持ちを口にしている。最終的に2人は「愛している…生まれてきて…よかった…」との叙情的なセリフとともに想いを通わせ、結ばれるのであった。

 作中に登場するセリフは、現実では口にするのが難しいほど情熱的な言葉ばかりだ。しかし、本作ではそれらの言葉が違和感なく非常にマッチしている。それは池田氏の描写がゴージャスでとにかく美しく、この作品特有のロマンティックな雰囲気を漂わせているからだろう。

■お蝶夫人への熱い気持ちがほとばしる!『エースをねらえ!』

『エースをねらえ!』は、山本鈴美香氏による人気作品だ。テニスをテーマにしたスポーツ漫画のイメージがあるが、ところどころにキャラクター同士の恋愛シーンがある。なかでも情熱的なポエムを胸に秘めているのが、“お蝶夫人”こと竜崎麗香に想いを寄せる、男子テニスプレイヤーの尾崎勇だ。

 何度、お蝶夫人を誘っても振られていた尾崎。しかし“海が見たい”というお蝶夫人を連れ出すことに成功し、岸壁ではじめて2人きりに。

 打ち寄せる波を背景に「男波がひとつ 女波がふたつ」と、ナレーションが入る。そこでお蝶夫人は「ひき潮よりもあたくしは 人の多く生まれるというみち潮がいい」と考えている。そんなお蝶夫人を見ていた尾崎は「たとえどれほどはげしく泣いても そのほほに涙のあとはのこらない あなたは美しい!」と、想いをさらに強くする。

 その後、岸壁を降りるためにそっと手を差し出したお蝶夫人。その手を取ることができた尾崎は万感の思いにかられ、親友の藤堂に電話した際にこう告げる。「思いこがれた3年半…むくわれてあまりある…」「藤堂…恋をしてよかった」と。

 彼女の手に触れただけで「むくわれてあまりある」と言うシーンは、まさにプラトニック恋愛の極み。多くの人が初恋の人に触れただけでも幸せになった、あの甘酸っぱい気持ちを思い出させてくれるポエムなシーンである。

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