『鉄拳チンミ』や『修羅の門』何度も絶体絶命に…大逆転劇に成功した『マガジン』格闘漫画の胸熱だった一戦の画像
月刊少年マガジンコミックス『鉄拳チンミ Legends』第17巻(講談社)

 何度も絶体絶命に陥りながら大逆転劇で生還した格闘漫画の一戦には、胸を熱くさせられる。筆者的に格闘漫画といえば、『週刊少年マガジン』や『月刊少年マガジン』の講談社作品だ。とくに『鉄拳チンミ』シリーズや『修羅の門』に『はじめの一歩』は面白く、燃えたものだ。

 そこで、この3作から大逆転劇に成功した胸熱な一戦を紹介していこう。

■「みんなと帰るんだ…」何回も死にかけて大逆転の通背拳を決めた『鉄拳チンミ Legends』チンミVSガンテイ

 まずは、前川たけし氏による『鉄拳チンミLegends』でのチンミ対ガンテイ戦だ。ひょんなことから異国のミト姫の誘拐現場に出くわしたチンミと弟子のグンテは、近衛兵隊長ダルトとともに悪党街・マウロンにあるゼイガンの砦へ侵入する。

 断崖絶壁を登り、砦にいる十人衆プラス一匹(マントヒヒ)との戦いで披露困憊のチンミだったが、ミト姫を解放するために最終決戦のガンテイとの対決に臨む。そもそもミト姫は隣国の姫であり、大林寺に所属するチンミには関係ないのだが、持ち前の正義感が悪を許さない。

 これまでの蓄積されたダメージが圧し掛かるなか、相手は2本の剣が1対になっている“黒翼剪剣”の使い手ガンテイ。チンミは棍を手にして立ち向かうも、ガンテイは強いだけでなく残忍で容赦ない相手。目が血走っており、友達にはしたくないタイプだ。

 終始劣勢のチンミは、ギリギリのところで致命傷を避けていく。しかし、足を斬られて素早い動きを封じられてしまい、もはや意識を保つのもやっとのほど。最後は黒翼剪剣で首を挟み込まれて斬り落とされそうになるが、これも棍で防ぐ。

 はじめて自分の間合いに入ったガンテイに前蹴りを返されて意識を失いかけるが、そのはずみで板から剣が外れ、咄嗟に棍で剣を弾いてガンテイの両腕を負傷させ、最後の気力を振り絞った“通背拳”を浴びせて大逆転勝利。

 限界の先にある強さ……何度も死にかけてギリギリで勝利したチンミ。意識は失ってしまうものの、チンミはミト姫を含め、“みんなと…帰るんだ…”という思いで死力を果たしたのだからカッコよすぎるぜ。

■「スタンド アンド ファイト」満身創痍のなか無空波を決めた『修羅の門』陸奥九十九VSアリオス・キルレイン

 次は川原正敏氏の『修羅の門』第三部で、ボクシングヘヴィ級王座統一トーナメント決勝戦の陸奥九十九対アリオス・キルレイン戦だ。アメリカが誇る最強ボクサーのアリオス。まだ無冠だが、実力は歴代最強であり、九十九が戦いたいと思うほどの相手でもあった。

 万全で決戦を迎えたアリオスに対し、九十九は龍造寺巌とのスパーリング中(ほとんど実戦)に左拳と肋骨を骨折していた。完治しないまま対決となったが、このダメージをアリオスに気付かれてしまう。虎砲に匹敵するショートアッパーは、ガードしても肋骨に大ダメージを負ってしまうほどの威力だ。

 それでも、体内に潜む圓明流の血が目覚めはじめた九十九。折れた拳で全力のパンチを放つなど、ボクサーにあるまじき戦い方を目にしたボクサーのアリオスは困惑し、後半は九十九がポイントリードするくらいの展開になっていく。

 しかし、判定ではどう転んでも負けてしまう。しかも、最終ラウンドでは吹っ切れたアリオスが肘打ちや足の指を踏むといった反則行為を繰り出してくるのだ。何でもありの戦いなら圓明流を使える九十九が有利なのだが、セコンドのテディ・ビンセントの想いに応えるためにも九十九はボクシングのルールのみで戦いを続ける。

 傷だらけになった九十九だが、アリオスの“ライトニングストレート”をかわして、懐に潜り込んだ。ショートアッパーで迎撃されるも、それを肘で叩き落として奥義“無空波”を放ち、最後は追い打ちを放ってアリオスをKOした。

 すでに最強ともいえる実力の九十九。そもそもトレーナーはいらなかったかもしれないが、テディから教わった「スタンド アンド ファイト」(立って、そして戦いなさい)、これだけを守ってベルトを手にした展開には泣けてくる。

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