ほかの生物の肉体や体内に潜り込み、ときには宿主すらコントロールしてしまう、おぞましい習性を持った“寄生生物”たち。漫画やアニメでも、なにかに“寄生”するキャラクターは多数登場している。今回は、驚異的かつどこかユーモラスな寄生系モンスターたちについて見ていこう。
■寄生生物でも愛嬌たっぷり…『寄生獣』ミギー
“寄生”というキーワードから、岩明均氏の代表作である『寄生獣』を真っ先に思い浮かべた方も多いのではないだろうか。1988年に『モーニングオープン増刊』(講談社)で連載されたのち、『月刊アフタヌーン』にて連載された。
突如、宇宙から飛来した「パラサイト(寄生生物)」に寄生された人間たちの激闘と、群像劇を描いた本作。主人公である高校生・泉新一もこの「パラサイト」に寄生されてしまうのだが、彼は右手に宿った“ミギー”と名乗るこの生物と、奇妙なパートナーとしてともに戦っていくこととなる。
ミギーは変形した右手に目玉や口、刃を持ついびつな姿なのだが、それでいてどこかコミカルな立ち振る舞いも多い。初期はほかの「パラサイト」同様、冷淡な言動が目立っていたが、新一と共生していくなかで人間について学び、彼とも良好な関係を築いていく。
見た目こそモンスターだが、本を開いて猛勉強したり、興奮して触手が絡まってしまったりと、その行動はどこか可愛らしく、そのギャップに魅了されたファンは多いだろう。
また、新一とのシュールなやり取りも本作の特徴で、冷水で手を洗った際に思わずミギーが「シンイチ つめたい」と声を上げるなど、おもわずクスリと笑ってしまうようなシーンも描かれている。
新一とはときに激突することもあったが、それでもミギーは徐々に人間を理解していき、最終的には“親友”とも呼べる強い絆で結ばれるようになっていく。寄生生物というおどろおどろしい設定を持ちながら、奇妙な愛くるしさから本作のマスコットとして活躍する、なんとも面白いキャラクターである。
■狡猾さも成長性も高い厄介者…『ジョジョの奇妙な冒険』ネーナ
1986年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載が開始された『ジョジョの奇妙な冒険』は、今もなお新たな物語が描かれ続けている、荒木飛呂彦氏の代表作である。
タイトル通り、どこか“奇妙”な能力を身につけたキャラクターたちが数多く登場する本作において、寄生に関する能力を見せつけたのが、第3部に登場する女性・ネーナだ。
エジプトを目指して旅をするジョースター一行の前に偶然現れたネーナだったが、実は彼女もまた宿敵・DIOが放った刺客の一人。おしとやかな美少女を装ってはいるが、その裏で自身の“スタンド能力”を活用し、徐々にジョースター一行を追い詰めていく。
彼女がターゲットに選んだのは一行の最年長者・ジョセフで、ネーナは自身のスタンド・“女帝(エンプレス)”を彼の腕に寄生させていた。
このスタンドは人の顔の形をした腫瘍……いわゆる“人面瘡”となって発現し、ジョセフに罵詈雑言を放つだけでなく、周囲にあるものを使って彼の命を奪おうと襲い掛かっていく。
しかもこのスタンド、周囲の物を喰らうことで成長し、最終的には腕から小さな上半身が生え、より多彩で強力な攻撃を仕掛けるまでになってしまう。厄介なことにジョセフの肉体を媒体としていることから、彼が得意とする“波紋”による効果も薄く、直接攻撃以外にも“声”で周囲の住民を誤解させたりと、あの手この手でジョセフを窮地に立たせた。
肉体に“寄生”する特徴もさることながら、ターゲットを追い詰めるその狡猾な立ち振る舞いが、なんとも恐ろしいスタンドである。