■そばに置いた女性はただひとり… 『るろうに剣心』志々雄真実
最後に紹介するのは、和月伸宏氏の『るろうに剣心 ー明治剣客浪漫譚ー』に登場する志々雄真実だ。女性を侍らせている点では前者2人と同じだが、ハーレムではなく、愛した人を常に侍らせているというところが異なる。志々雄が侍らせていたのは、愛人兼世話役の美女・駒形由美という女性ただ一人だ。
弱肉強食思想の志々雄だが、アジトに乗り込んできた剣心たちの案内役を由美に任せるなど、由美を信頼しているようす。ちなみには彼女は志々雄と剣心の最終決戦にも立ち会っていた。
しかしそんななか、志々雄は、活動限界を迎えた彼を心配して割って入ってきた由美もろとも、剣心を刺す。由美は愛する人に殺された形になってしまうが、志々雄は「俺は誰よりコイツを理解している」と発言。由美も由美で「嬉…しい…」と涙を流し、初めて闘いの中で志々雄の役に立てたと喜びながら絶命した。
欲望に従って女性をほしいままにする悪役も多いが、相思相愛型の悪役はそれはそれで感情移入してしまう。大人になってから、こういう愛の形もあるのかなと考えさせられる。
それにしても、圧倒的な強さからくる余裕を持った志々雄だからこそ、自分を心の底から愛してくれる由美を常に侍らせることができたのだろう。
今回紹介した以外にも、男でも惚れてしまうような悪役がいる。『北斗の拳』のラオウや『ドラゴンボール』のフリーザ様のようなヒールに対し、「ついていきたい!」と思った人も多いだろう。もちろん、彼らの強さに憧れている部分はあるが、絶対的な自信といった内面的な強さにも魅了される。
今回紹介した作品はどれも名作中の名作。正義側だけでなく、悪役たちが光っている部分もあるからこそ、語り継がれる名作になるのだろう。