1973年11月19日号『週刊少年チャンピオン』で連載が開始され、50周年を迎えた手塚治虫さんの代表作『ブラック・ジャック』。医師免許を持たない天才外科医・間黒男の活躍を描いた、医学漫画の先駆けとなる名作だ。
リメイク漫画、テレビアニメ、映画とさまざまな形で作品が生み出される中で、人気俳優を起用した実写化もされており、初実写作品となった映画は原作連載中の1977年に公開された。そこで今回は、同作の記念すべき50周年を機に、『ブラック・ジャック』の実写化作品の歴史と豪華出演者たちを振り返ってみようと思う。
■宍戸錠主演、1977年公開の初実写化映画
『ブラック・ジャック』が漫画を飛び出し初めて実写化されたのは、大林宣彦監督による1977年公開の映画『瞳の中の訪問者』。その後、連続テレビ小説『澪つくし』(1985年)や大河ドラマ『独眼竜政宗』(1987年)をヒットさせるジェームス三木さんによる脚本で、ブラック・ジャック役を務めたのは日活スター・宍戸錠さんだった。
映画のベースは原作の「春一番」。角膜手術を受けた小森千晶(片平なぎささん)が男の残像を見るようになり、調べていくとその角膜は過去に殺害された女性のもので目の前に現れる男は犯人だったというあらすじだ。
角膜手術をしたのも角膜の正体を突き止めたのもブラック・ジャックだが、同作は主人公を小森千晶としており、ブラック・ジャックはあくまでも脇役として描かれている。
宍戸さんは、顔の半分を青く塗って原作のブラック・ジャックをそのまま再現した。宍戸さんがメイクしたわけではないだろうが、これが思ったよりもチープで本当に顔の半分を青く塗っているだけなのである。当時の視聴者も度肝を抜かれたのではないだろうか。
このメイクを見た手塚治虫さんは、「こんな人間がいるか」とクレームをつけたという逸話もあり、原作漫画194話「二人三脚」でも、ピノコが「先生キヤイ!先生の宍戸錠!」とネタにしている。
■加山雄三主演、初ドラマ化は1981年放送
初の実写版連続ドラマは、1981年に加山雄三さん主演で放送された。第1話での池上季実子さんをはじめ、真行寺君枝さんに江波杏子さんなど毎回豪華なゲストが出演していたり、今では実力派監督となった三池崇史さんが助監督としてデビューを果たしていたりと、邦画史から見るうえでも貴重な作品である。
正式なタイトルは『加山雄三のブラック・ジャック』で、エピソードは概ね原作に沿っているが登場人物の設定などはドラマオリジナルで同作にしか登場しないキャラも多く、逆にドクターキリコは出てこない。
原作と大きく違うのはブラック・ジャック自身である。加山雄三さん扮するブラック・ジャックは、昼間は画廊の経営者・坂東次郎として生活していて外科医になるときだけマント・顔の傷といった原作らしい風貌になるという“変身ヒーロー?”もしくは“必殺仕事人スタイル”なのだ。
ただ加山さんは存在感が強く、ブラック・ジャックに変身するとどうしてもコスプレ感が否めない。それも含めて一つの作品として振り返ってみると面白いかもしれない。
■隆大介主演、1996年リリースのVシネマ版
1996年には初のVHS限定実写化作品が制作され、『ピノコ愛してる』『ふたりの黒い医者』といった単発作品が3作リリースされている。原作にはない現代風のコンピュータを使うなど多少の改変はあったが、ドラマオリジナル要素を抑えて原作に忠実な内容で作られており、ファンからも好評を博した。
主演は隆大介さんで、オールバックのクールなブラック・ジャックを再現している。渋い雰囲気がブラック・ジャックのダークな一面に上手くマッチし、原作のイメージに合っていたように思う。
3作目となる『ブラック・ジャック3 ふたりの黒い医者』は、タイで撮影を行っており、世界観も壮大になった。シリーズの中で、最も「傑作」の声が高かったのがこの『ふたりの黒い医者』である。
これまでの実写では登場しなかったドクターキリコも、ここにきて初登場。草刈正雄さんが演じていたが、こちらも原作のイメージに忠実で見事にハマっていた。