『ズッコケ三人組』に『はれときどきぶた』図書館でも大人気だった「アニメ化された」児童文学を振り返るの画像
ポプラ社文庫『それいけ ズッコケ三人組』(ポプラ社)
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 10代の子どもを対象に書かれた本を指す「児童文学」。日本では1900年代初期に始めて作られたとされているが厳密な定義はなく、今でも研究が重ねられているジャンルで、小学生時代に図書館で人気の作品をクラスメイトたちと代わる代わる読んでいたという人も多いと思う。

 70年代はどちらかというと世界名作劇場など海外の児童文学のアニメ化が活発だったが、90年代なると日本人作家による作品がアニメ化されるようになった。そこで今回は、日本でアニメ化もされた「児童文学」をいくつか振り返ってみたい。

■仲良し3人組の活躍を描く『それいけ ズッコケ三人組』

 まずは1978年に第1作が刊行された那須正幹さんによる『それいけ ズッコケ三人組』。刊行されるやいなや子どもたちの心を掴み、昭和・平成と時代を超えて多くの人々に愛され続けている。

 物語が1巻完結になっているのも、子どもにとって読みやすい形なのだろう。実際自分も、物知りな「ハカセ」、やんちゃでイタズラ好きな「ハチベエ」、おっとりマイペースな「モーちゃん」の仲良し3人組が繰り広げる様々な冒険や事件に夢中になったものだ。

 アニメ化されたのは第1作刊行から26年がたった2004年で、毎週日曜の朝9時からテレビ東京系列で放送された。アニメも1話完結となっていて、いつ見始めても入り込める作り。原作出版時と現代では時代背景も変わっているが、今の子どもたちも楽しめる作品なのは間違いないだろう。

 アニメは全26話なので未制作のエピソードもあり、たとえばポプラ社が行った人気巻ランキング1位の「うわさのズッコケ株式会社」などはアニメ化されていない。

■右を見ても左を見てもブタ!『はれときどきぶた』

 1980年に刊行された矢玉四郎さんの『はれときどきぶた』は、ある意味異端的な児童文学かもしれない。「日記に書いた嘘がすべて本当になる」というシュールな設定は、出版当時の児童文学界にはない斬新なものだった。

 物語の内容もハチャメチャで、「鉛筆の天ぷらを作る」「お母さんの首がのびる」といったちょっと怖いものから「大量のブタが降ってくる」というぶっ飛んだものもあり、子どもたちに強いインパクトを与えた。

 しかしストーリーの奇抜さと愛嬌のあるブタのキャラデザインが子どもたちに大ウケ。おもに低学年に人気があった本で、続編シリーズや映画の制作、海外への翻訳出版がされるまでになった。

 テレビアニメは1997年7月からテレビ東京系列で放送されているが、原作に沿っていたのは1話目あたりまで。その後は内容や設定も大きく変わり、則安が日記で消し忘れた1匹のブタ(はれぶた)と繰り広げるハチャメチャストーリーというオリジナルエピソードとなっていた。原作も奇抜だったがアニメ版はそれを凌駕するカオスっぷりなので、未視聴の方はチェックしてみてはいかがだろうか。

■キツネのゾロリが繰り広げるいたずらと大冒険『かいけつゾロリ』

 1987年にポプラ社から刊行された原ゆたかさんによる『かいけつゾロリ』は、キツネのゾロリの冒険やいたずらを描いた大人気作品である。ゾロリシリーズは1987年の発行が最初だが、ゾロリ自体は1984年出版の『へんしーんほうれんそうマン』にも登場していた。

 山寺宏一さんがゾロリ役を務めたテレビアニメは2004年を皮切りに、2005年・2020年と数回制作されている。時代背景やその時のトレンドを上手く取り入れ、時代が移り変わろうと、親子揃って笑いながら楽しめるようなつくりになっている点が特徴的だ。

 原さんは元々児童書の画家だった。作家活動を始めてからは「目が離せない展開を描けば本が苦手な子でも読めるのでは」という想いのもと、インディ・ジョーンズなどのアドベンチャー映画を参考にゾロリの冒険を生み出し続けてきた。物語の起承転結を徹底的に分析して書かれているからこそ、子ども向けの本ながら大人が見ても面白いのだろう。

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