『きのう何食べた?』ケンジから『鋼の錬金術師』ボスキャラまで……まさに七変化! 内野聖陽さんが演じた漫画実写化作品での名演技の画像
(C)「きのう何食べた? season2」製作委員会 (C)よしながふみ/講談社

 現在ドラマ第2期が放送中の『きのう何食べた?』(原作:よしながふみさん)は、同性カップル「シロさん(筧史朗)」と「ケンジ(矢吹賢二)」の日常をリアルに描いた作品だ。シロさん役に西島秀俊さん、ケンジ役に内野聖陽さんを迎えて2019年にテレビ東京で実写化されて以来、原作ファンのみならず多くの視聴者から高い評価を得ている。

 なかでも話題になっているのが、内野さん演じるケンジの完成度の高さだ。やや少女趣味な一面があるケンジの何気ない仕草やシロさんを見つめる目つきは、まさに恋する乙女そのもの! つい“内野さん自身も乙女チックな方なのかしら?”と思うほどだが、ほかの作品ではまったく毛色の違うキャラを演じている。そのなかから今回は漫画実写化作品に絞って、内野さんの名演技の数々を紹介したいと思う。

■元祖・鬼コーチ『エースをねらえ!』の宗方仁

 まずは、昭和を代表するスポ根漫画『エースをねらえ!』(山本鈴美香さん)。一大テニスブームを巻き起こした本作は、2004年にテレビ朝日系列でドラマ化された。

 本作で内野さんが演じたのは、宗方仁。主人公・岡ひろみにテニスの才覚を見出し、スパルタ特訓をする鬼コーチだ。しかし厳しい特訓の裏には、不治の病で余命わずかという事情や、それゆえひろみに自分の夢を託したいという切実な思いがある。

 それもあってか、ドラマの宗方コーチにも、どこかもの悲しくミステリアスな雰囲気が常に漂っていた。それでいて、倒れたひろみに容赦なくテニスボールを打ちつける際の顔……、令和の時代では到底理解されない熱血スポ根コーチだ。

 そして時折ひろみに向けられる、師弟愛とも恋愛感情ともつかない、強い意思が感じられる視線……そこには、ケンジで見せた乙女要素はまったく感じられない。

■家族思いの父親と冷酷なラスボス『鋼の錬金術師』のヴァン・ホーエンハイムと「お父様」

 続いて、錬金術師の兄弟の旅と戦いを描いたダークファンタジー『鋼の錬金術師』(荒川弘さん)。2022年に上映された実写映画の完結編二部作『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー /最後の錬成』では、主人公・エルリック兄弟の父親であるヴァン・ホーエンハイムと、「お父様」と呼ばれる物語最大の敵を、内野さんが一人二役で演じている。

 ホーエンハイムは家族思いの父親で、天然ボケで飄々としたところがあるものの、ふとしたときに見せる厭世的な表情が魅力的なキャラ。一方でお父様はホーエンハイムそっくりな姿をしているものの、野心的で冷酷。典型的なラスボスキャラだ。

 この対照的な二役を見事に演じ分けているのは、ホーエンハイムとお父様が対峙する場面を見れば一目瞭然だ。また、対話中、お父様が見せる少し寂しそうな表情はまさに原作そのもので、相変わらずの完成度の高さに驚かされる。

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