■アニメの描写も恐ろしかった調査兵団団員たちの最期の姿
調査兵団団員の死といえば、第57回壁外調査時に女型の巨人との戦闘で全滅してしまったリヴァイの部下たちの死も衝撃であった。
はじめは主人公のエレンに懐疑的であったものの、徐々に親交を深め信頼関係を築いていくペトラ、オルオ、エルド、グンタの4人。今後もエレンやリヴァイと共闘していくのだろうと思われた矢先に、女型の巨人によってあっけなく全員が戦死してしまう。
特に紅一点の心優しいペトラが女型の巨人に踏み潰されて死ぬさまは残酷で、駆けつけたリヴァイが立体軌動装置で飛びながら仲間の死体に目を向ける様子は悲痛だった。
巨人との戦闘で命を落とすキャラの多い中、それとは関係ないところで死んでしまった訓練兵団104期の仲間のサシャも衝撃度が高かった。
物語開始当初からコメディ要員でズレた発言も多かった愛されキャラのサシャだが、飛行船に乗り込んできたガビに撃たれ死亡してしまう。あまりに突然で、これまで『進撃』を見守ってきた人にとってはどうしても信じたくないシーンだった。
しかし彼女については、当初は逃げ遅れた少女・カヤを助けるところで死亡する予定だったと作者の諫山氏が語っている。「死ぬのはここじゃない。もっとふさわしい場所があるんじゃないか」と考えた諫山氏の導いたシーンがこの答え。パラディ島のエルディア人を「悪魔の末裔」と信じるガビが、この後サシャを取り巻く人たちと交流することによって考えを改めていく。彼女の死にはとてつもなく大きな意味があったのだ。
アニメのオリジナル演出が怖すぎたのは、調査兵団・ナナバの死である。ウトガルド城跡で巨人と交戦したナナバは、負傷した仲間を助けたことで刃とガスを使い切ってしまい、なすすべのない状況で巨人に捕食される。
このシーンが漫画で描かれた際にはセリフもなく、他の兵士同様、残酷であっても特別心に残るものではなかった。しかしアニメでは巨人に四肢を引っ張られ(その時既に右足は引きちぎられ失っている)、錯乱状態に陥りながら「やだやだ!お父さんやめて!ごめんなさい!ごめんなさい!もうしません!」と父親への謝罪の言葉を叫びながら食い殺されている。
父親から厳しい教育を受けさせられていたのか虐待をされていたのかは明らかになっていないが、より悲惨さを感じる演出になっていたことは間違いない。
どのキャラクターの最後も、せめて苦しまずに、という読者の願いは絶望によって打ち消されるものばかりだった。だがしかしそれらも全て『進撃』の世界観を物語るために意味あるものだったのだと思いたい。