■話題のドラマでも…『きのう何食べた?』西島秀俊さん

 よしながふみさん原作の『きのう何食べた?』は、2019年に実写ドラマ化され、10月から続編のseason2が放送されている人気作だ。

 西島秀俊さんと内野聖陽さんがメインキャストをつとめる本作では、シロさんこと筧史朗役の西島さんが作る料理にも注目が集まっている。

 本作に登場する料理を担当しているフードスタイリスト・山崎慎也さんは「原作に出てくるレシピに忠実に料理を作る」ことを徹底しているそうだ。たしかに作者のよしながふみさんが考案する料理は、素朴ながらどこか新しい発見があり、実際に食べてみたくなるようなものばかりである。

 “料理”に重点をおく作品とあって、おもに料理担当である西島さんもかなり練習して撮影に挑んでいるという。先に紹介した『味いちもんめ』のように、“料理もの”の作品ではキャストの手元を吹き替えすることも多々あるが、『きのう何食べた?』では、西島さん本人が料理しているシーンも多いようだ。

 そして、「西島さん=料理」という印象はこのドラマですっかりできあがった様子。2022年に放送されたドラマ『ユニコーンに乗って』で西島さんがラーメンを作るシーンがあるのだが、手際よくネギを刻んだりする姿に「シロさんだ!」と、『きのう何食べた?』ファンは歓喜していた。

■【番外編】共演者も驚く包丁さばき! 『天皇の料理番』佐藤健さん

 料理人といえば、『天皇の料理番』の実写化作品を思い出す人も多いだろう。本作は宮内省大膳職司厨長だった秋山徳蔵さんの実話をもとに描かれた、言わずと知れた名作だ。(こちらは杉森久英さんの小説の実写化となるため、【番外編】とさせていただく)

 1980年に堺正章さんを主演にむかえて初のドラマ化を果たした本作は、1993年に主演:髙嶋政伸さんでリメイクされているが、今回取り上げたいのは、2015年に「TBSテレビ60周年特別企画」で、佐藤健さんを主演に再びドラマ化されたときのエピソードだ。

 本作で、料理人として成長していく主人公・秋山篤蔵を演じた佐藤さん。包丁さばきも大きな話題となったが、驚くべきことに佐藤さんは代役なしで撮影に挑んでいたという。料理初心者だった彼を指導したのは、服部栄養専門学校の西洋料理主席教授・佐藤月彦さんだ。

 佐藤さんは料理の基礎である“衛生観念”をはじめ、野菜の皮むきなど宿題をこなし、撮影の合間に何度も代々木にある学校まで足を運んで技術を磨いたという。

 撮影時には師匠である佐藤さんから「100点」の太鼓判を押されるほどだったが、しかし、包丁さばきが“上達しすぎて”しまったため、第1話の撮影ではあえて下手に見せるように指示されたなんて裏話も……。役作りとはいえ、さすがと言わざるをえない。

 また、本作では病に冒されていく秋山の兄・周太郎を演じた鈴木亮平さんが、20kg減量したことでも話題となった。名優たちが全身全霊で挑んだ『天皇の料理番』は、歴史に残る名作として語り継がれるだろう。

 

 さまざまな職種の役に扮する俳優たち。特殊な技術を必要とする役柄を演じる際には、役作りで“その道のプロ”に見せてしまうのだから、本当に脱帽してしまう。本業の料理人でさえ感心してしまうほどの腕前を見せる彼らの演技を、ぜひ作品で目撃してほしい。

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