ファンの間では、涙なくしては見られない名シーンや名言が多いことでも知られるアニメ『クレヨンしんちゃん』。
主人公・しんのすけもおふざけ大好きなわんぱく少年ながら名言を発することがあり、アニメの中では「話を聞かないで疑う、大人の悪い癖ですな」「マサオ君て本当に親切、本当にいい人。もしオラが女だったらマサオ君とは絶対結婚しない」など5歳児とは思えない深い言葉を残してきた。
1990年に『漫画アクション』にて連載が開始され、1992年からテレビ朝日系でテレビアニメが放送開始。1993年の『アクション仮面VSハイグレ魔王』の公開以降、毎年劇場版映画も公開されており、子ども視聴者だけでなく、大人が見ても思わず涙してしまうような作品は数えきれない。
今回は、そんな主人公・野原しんのすけから飛び出した名言たちを映画『クレヨンしんちゃん』に絞ってピックアップして紹介していきたい。
■未来のしんちゃんの名言にグッとくる『超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁』
2010年に公開された『超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁』は、劇場版第18作目となり原作者の臼井儀人さんが亡くなった後の第1作目に当たる映画。未来都市の「ネオトキオ」を舞台にしたSF作品で、しんのすけを始めかすかべ防衛隊や野原家の未来の様子が見られる。永遠の5歳児だったしんのすけたちの成長した姿も登場する、ある意味レアな作品だ。
格差社会が進んだネオトキオは、金有電機の社長でありタミコの父親・金有増蔵の支配によって太陽光を奪われ、暗く落ち込んでいた。大人しんのすけは、ネオトキオに明るさを取り戻すべくアクション仮面になりきって動き回っている。という建前だが本当は、暖かくしておねいさんの水着を見たいという5歳の頃と変わらない理由に突き動かされているのもしんのすけらしい。
そんな大人しんのすけがネオトキオに青空を取り戻した後に子どものしんのすけに向かって発した「おまえの未来はおまえのもんだぞ。好きなように生きろ!」は、名言の一つだろう。この作品では未来の様子が描かれており、5歳のしんのすけはこれから決まった未来に向かって進むことになる。
しかし、未来は誰にも分からないものであり自分で切り開くもの。大人しんのすけはこの発言で自分やネオトキオの存在を不確定なものにし、子供しんのすけに自分の人生を生きることを促したのだ。全編を通して大人しんのすけの顔を見せないようにしていたのも、その言葉を体現している。
父から否定され続けていたタミコに向かって言った「一緒にチョコビを食べられる。小さいけれど確かな幸せ」という言葉も胸に響くセリフ。この言葉の中には大きな愛がある。何気ない出来事の中にささやかな喜びを見出せるしんのすけは、心が豊かな大人になったのだろう。
■妹への愛に感動『伝説を呼ぶブリブリ3分ポッキリ大進撃』
2005年に公開された劇場版第13作目となる『伝説を呼ぶブリブリ 3分ポッキリ大進撃』。『ウルトラマン』や『仮面ライダー』といった多数の特撮ヒーローをオマージュしており、野原一家が正義のヒーローになって迫りくる怪獣たちを“3分後の未来”でやっつけるというストーリーだ。
「変身」「ヒーロー」という胸躍る展開に夢中になったひろしとみさえは、次第に家庭を疎かにするようになり家はごみ屋敷と化す。しかしある日強敵が現れて事態は急変。2人は勝ち目がないと引きこもってしまう。そんな時立ち上がったのがしんのすけである。
しんのすけは、勝てないであろうと分かっていながら「オラひまの素敵なお兄さまだから!ひまが女子大生になる未来を怪獣なんかに壊させないから!!強い人は弱い人を助けてあげるもんだから!」と怪獣と対峙した。わずか5歳の子どもが、妹の未来を守るために大人よりも強い覚悟を持って自分を鼓舞しているのだ。
これまでひろしとみさえがヒーローを単純に楽しんでいる描写が多かったため、しんのすけの本気度がどれだけのものかが伝わる。
さらにしんのすけは戦いの最中に敵を助けてピンチに陥った際に、みさえから「なぜそんなことしたの」と問われ、「強い人は弱い人を助けるものだけど、強い人も弱い人も関係なくお助けできればと思って」と言った。困ったときは立場に関わらず、助けあうべきだと気づかせてくれる一言である。