『ガンダム』アムロは輸送機で、シローはボールで…凄腕パイロットだからこそできた「貧弱機体」での神業の画像
バンダイのプラモデル「MG 1/100 RB-79K ボール (第08MS小隊版)」(C)創通エージェンシー・サンライズ

「モビルスーツの性能の違いが、戦力の決定的差ではないことを教えてやる!」 

 これはテレビアニメ『機動戦士ガンダム』第3話「敵の補給艦を叩け!」で登場したシャア・アズナブルの有名なセリフである。シャアはその後、そのセリフの通りにザクでガンダムを追い詰めたが、量産機で高性能機に肉薄する戦闘はインパクト抜群だ。

 これまで『ガンダム』シリーズでは、ザクとガンダム以上に大きな性能差がある中で行われた戦闘シーンが多数描かれており、搭乗するパイロットの才能がより強調されていた。今回は凄腕パイロットだからこそできた「貧弱機体」での神業が見られるシーンを見ていこう。

■非武装の「輸送機」でアッシマーを撃退したアムロ・レイ

『ガンダム』シリーズの凄腕パイロットといえば、真っ先に思いつくのはアムロ・レイだろう。

 アムロはファースト『機動戦士ガンダム』の主人公であり、作中ではジオンの名だたるエースパイロットを撃墜している。彼の乗るガンダムは、時が経つにつれて最新鋭機ではなくなり、ジオンの新型機に性能の差をつけられていくことになった。最終局面の対ジオング戦では、その性能差は顕著であった。

 そんなアムロだが、続編の『機動戦士Zガンダム』では、武装していない輸送機でアッシマーの撃退に成功している。

 輸送機は、全く戦闘を前提にしていない非武装の機体。それに対してアッシマーは、ティターンズの最新機で、当時としても珍しい可変モビルアーマー。全高23メートル、重量41トンと、かなり大きいサイズだ。

 そのアッシマーを、アムロは自らの乗る輸送機をぶつけて足止めし、撤退させている。戦力差のある相手に、自らの機体をぶつけるエピソードは珍しくない。『ガンダム』シリーズではよくある特攻エピソードである。

 しかし他の特攻エピソードとの大きな違いは、パイロットが脱出せずに刺し違えているかどうかであろう。アムロは一般的な特攻エピソードのように、機首のコックピット部分から相手に突っ込んでいくのではなく、アッシマーの下方から突き上げるように、輸送機の胴体部分で体当たりしている。刺し違える気は無く、生存性も考えて体当たりしたのだ。

 そしてその結果、自力で輸送機から脱出しパラシュートを開くことに成功している。アムロの他のパイロットとは違う、超人的な操縦センスを見せつけられるエピソードである。

■「ルッグン」の一撃でホワイトベースに大打撃を与えたシャア・アズナブル

 そんなアムロのライバルといったら、シャアだ。赤いパーソナルカラーの機体をいくつも乗りこなす、ジオンのエースパイロットである。

 そんなシャアの搭乗した機体の中で、目立たない存在なのが「ルッグン」だ。ジオン軍の偵察機という地味なポジションに加えて、シャアが乗っている時でも赤く塗られていない。作中でも、一瞬の登場なので、あまり印象に残っていないのかもしれない。しかし、その戦果は、シャアの搭乗機体の中でもトップクラスに優秀だ。

 ルッグンに乗るシャアが登場したのは、テレビアニメ版『機動戦士ガンダム』の11話。ホワイトベース隊とガウ攻撃空母の交戦中のことだ。

 アムロの乗るガンダムと、リュウの乗るガンキャノンが既にガウと交戦中であったが、シャアの乗るルッグンはホワイトベースの上空へ到達し、小型爆弾による爆撃を成功させている。しかもその1撃のみで、ホワイトベースの左舷後部を破壊。不時着に追い込んでいる。

 ホワイトベースは最新鋭の艦船だ。爆弾といえども、小型のもの1つだけで装甲を打ち抜くのは、当たり所が相当に良くないと不可能であろう。それを、ピンポイントの爆撃1撃のみで成功させたシャアは、やはり凄腕のパイロットである。

■シロー・アマダが「ボール」で高機動試作型ザクと相打ちに…

 最後に外伝系からも1つ神業エピソードを挙げておこう。『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』で主人公シロー・アマダが搭乗した「ボールK型」と高機動試作型ザクとの戦いだ。

 シローの乗るボールK型は、普通のボールに比べて装甲が厚いものの、ヘッドライトやウィンチは作業用のまま。管制システムやモニターなどのコックピット周りも軍事用に改造されているわけではない。

 対する高機動試作型ザクは、リック・ドム用の試作エンジンが搭載された高機動のもの。通常のザクよりも手強いはずである。それに比べると、少し装甲の高いだけのボールは貧弱機体と言わざるを得ない。

 しかし、シローのボールはその比較的厚い装甲でザク・マシンガンを受け止め、ウィンチで拘束。相打ちに追い込んでいる。

 比較的装甲の厚いタイプとはいえ、精密なダメージコントロールが無ければ、撃墜されていたであろう。そして、ボールの特性を最大限に活かさなければ、ここまで互角な戦いとはならなかったであろうことは想像に難くない。

 シローはその後、地上戦においても、生身で至近距離での、口径120ミリのザク・マシンガンの攻撃を、サイドステップで紙一重で避け、その上、携行していたバズーカでの反撃に成功している。

 土壇場で、そのときに出来うる最大限の力を発揮するシロー・アマダも凄腕パイロットである。

 フラッグ対ジンクスIII3機だったり、リーオー対ウイングガンダムだったりと、アナザーガンダムシリーズにも見ごたえのある「貧弱機体」での神業バトルが存在する。アナタはどのバトルが印象深いだろうか。

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