■BJと父親の関係性がドラマチックに!

 ストーリーの根幹にかかわる部分でいえば、BJと彼の父親の関係性にも大きく変更が加えられている。といってもこれは2004年に放送されたアニメではなく、その続編にあたる『ブラック・ジャック21』(以下『21』)の話だ。

 前作は原作と同じくオムニバス形式だったが、『21』は第1話から最終話までひとつなぎのストーリーになっている。その内容がなかなか大胆で、BJが謎の組織の陰謀を暴くため世界各地を飛び回るというものだ。そしてBJの父親も、物語の重要な部分にかかわってくることになる。

 原作におけるBJの父親は事故でボロボロになった妻子を捨てて愛人と逃げた、相当ひどい人間だ。おまけに20年も音沙汰がなかったのに突然連絡してきたかと思えば、妻(元愛人)の美容整形手術をBJに依頼してくる図々しさ。さらに、BJを息子として呼び戻したいとまで言っており、その自分勝手さには呆れてしまう。

 アニメでも言動としてはほとんど一緒だとはいえ、その裏に深い事情が隠されているという点で大きく違っている。やがて明かされるBJと父親をめぐる真実については、ぜひ本編をチェックして確かめてほしいところだ。

『21』は本間先生の設定にも大きく変更が加えられており、全体を通して非常に壮大なストーリーが展開されていく。いろいろな意味で原作とはかけ離れてしまっているが、ここまで違っていると“別もの”として思いきり楽しめる。

 筆者も当時、世界各地を駆け巡るBJがかっこよく思えて、手に汗を握って物語に没頭した覚えがある。今観たらまた印象が違うかもしれないので、久々に全編通して観返したくなってきてしまった……。

 

 こうして見てみると原作とかなり違いがある、アニメ『ブラック・ジャック』。今回紹介したのはほんの一例で、細かな点を挙げていくとキリがない。機会があれば各エピソードを細かに比較検証してみるのも面白そうだ。

 もちろん、こうした“改変”には否定的な意見もあるだろう。しかし小学生のときに観たアニメがきっかけで『ブラック・ジャック』にどっぷりハマり、それまで全部は読んだことがなかった原作を読破した身としては、どちらにもそれぞれの魅力があると主張したいのである。

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