今年連載開始50周年を迎え、各種イベントの開催や限定グッズの発売で盛り上がりをみせている『ブラック・ジャック』。本作はOVAやイベント上映、インターネットアニメなどを経て、2004年に連続テレビアニメとして放送開始された。
このアニメはゴールデンタイムに放送されていたこともあってか、設定やストーリーに子どもを意識したアレンジが加えられている。当然ながら原作ファンのあいだでは賛否両論分かれているのだが、当時小学生で放送を毎週楽しみにしていた筆者としては、けっこうな思い入れがある作品だ。
今回はそんなアニメ『ブラック・ジャック』にどんな改変要素があったのか、あらためて振り返ってみようと思う。
※記事内に出てくる話数は2004年放送のテレビアニメのもの、巻数は秋田文庫版のものを指す。
■レギュラーキャラが増えてにぎやかに
漫画『ブラック・ジャック』のレギュラーキャラといえば、主人公のブラック・ジャック(以下BJ)とその助手であるピノコのふたりである。BJの恩師である本間先生や山田野先生、ライバルのドクター・キリコなど、定期的に登場するキャラはほかにもいるが、“レギュラー”と呼べるほどではない。
しかしアニメでは、ピノコと仲良しの中学生・写楽とその姉である和登がレギュラーキャラとして登場。ちなみにこのふたりは手塚治虫さんの別作品『三つ目がとおる』のメインキャラだが、そちらでの設定とは大幅に異なる。手塚作品におなじみの、各キャラを俳優のように扱う“スター・システム”が活用されているわけだ。
またBJの行きつけのお店として「Tom」という喫茶店が出てくるが、こちらも原作には登場しない。そこのマスターである哲、アルバイトとして働く本間先生の娘・本間久美子といったキャラは原作でも登場するものの、アニメではそれ以上の出番を与えられている。
そしてBJの家で飼われている犬・ラルゴの存在も忘れてはならない。その名の通りのんびり屋だが、危機察知能力に長けていて非常時に活躍することもある。当時、筆者は原作を一部しか読めていない状態でアニメを視聴し、ラルゴの存在に慣れきっていたため、のちに漫画を読破したときにレギュラーではないと知って衝撃を受けたものだ。
こんな調子でレギュラーキャラが増えているため、アニメは原作よりもずいぶんとにぎやかである。そもそもピノコの出番自体増えていて、原作では登場しない回でもBJと行動をともにしていたりする。
そんな環境の影響もあってか、BJの性格もずいぶんと丸いというか、原作以上に面倒見がよくお人好しな一面が強調されているようだ。かっこよくて優しくて頼れるBJの姿はいかにも“大人の男性”で、思わずときめいてしまったものである。
■各エピソードの展開がマイルドに変更
基本的には原作を活かしてはいるものの、手術シーンの描写やストーリー展開がマイルドにされているのもアニメの特徴である。
たとえば、原作で死亡したキャラが生存する展開になるのもそのひとつ。先ほど取り上げたラルゴも、原作の「万引き犬」(4巻)というエピソードで登場するのだが、そのラストで死亡してしまっている。ようやく登場したと喜んだ途端に退場してしまって、筆者はとても悲しかった……。逆に原作から入ってアニメを観たファンのなかには、ラルゴ生存に救われた気持ちになった人もいるのかもしれない。
ほかにも、11話「シャチの贈りもの」(原作:2巻収録「シャチの詩」)や46話「文化祭の用心棒」(原作:12巻収録「帰ってきたあいつ」)、49話「人面瘡の本音」(原作:1巻収録「人面瘡」)など、死ぬはずのキャラがBJの手術のおかげで生き延びる展開は数多くある。
ただ、“死”が描かれることで完成している作品も多いため、原作と比べて物足りなく感じてしまうケースも。ただ子どもも視聴する時間帯に放送されていたことを考えると、そうなってしまうのもしかたがないのかもしれない。
原作にはトラウマ級のショッキングなシーンや後味が悪い結末なども多いのだが、それらが削られていることで見やすくなった面は確実にある。好みは分かれるだろうが、原作の良い部分はしっかり活かしつつ幅広い層向けにアレンジしている印象だ。