■クラシックブームを作った『のだめカンタービレ』

 最後は、クラシック音楽を流行らせた『のだめカンタービレ』を振り返ってみよう。2001年から『Kiss』で連載が始まった二ノ宮知子さん原作の『のだめカンタービレ』は、シリーズ累計発行部数3900万部を超える人気作となった。上野樹里さん、玉木宏さん主演で2006年にはドラマ、2009年と2010年には映画も公開されている。

 同作は、指揮者を目指す千秋真一とガサツながら天才的な音楽の才能を秘めた主人公・野田恵こと“のだめ”が、音楽を通して惹かれ合っていく様子を描いた「クラシック×恋愛」漫画。扱うテーマがクラシック音楽ゆえ、作中では多くの名曲が紹介されていた。

 一般的に、クラシックのような専門的なジャンルを掘り下げた作品は知識がない人々にとって踏み込みにくい世界である。しかし、『のだめカンタービレ』はコメディタッチな作風で音楽の専門用語や楽曲の情報を細かに説明しており、誰が読んでも分かりやすい。

 「お堅い」「敷居が高い」と感じる人も多いクラシックというジャンルを身近に感じられる『のだめカンタービレ』は、瞬く間に大ヒット。「クラシックってこんなに楽しい音楽だったんだ」と興味を持つ読者も増え、クラシックのCDはグングン売上を伸ばしていった。

 漫画に登場した各キャラクターおすすめの楽曲やドラマ内で演奏された名曲を、一流の音楽家が演奏したアルバム「のだめカンタービレ キャラクター・セレクション」も人気を博した。


 このほかにも、競技かるたを流行らせた『ちはやふる』といった作品もある。漫画をきっかけに未知のジャンルに興味を持ち、そこから趣味の世界が広がっていくのは素晴らしいことだと思う。

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