■凶悪すぎて一度しか使われなかったフォトン・トルピード

 モビルスーツが装備する武器としてあきらかに「不適切」といえるのが、富野由悠季監督による最新作『ガンダム Gのレコンギスタ』に登場した「フォトン・トルピード」だろう。フォトン・トルピードは、主人公ベルリ・ゼナムが乗るG−セルフに追加装備されたパーフェクトパックの武装だ。

 光の粒子(反物質結晶体)をまき散らす兵器で、粒子に接触した部分は対消滅によって爆発せずに消滅する。そのうえ、消滅させたものからエネルギーを回収するというトンデモ武器だ。

 第22話「地球圏再会」で地球圏に帰ってきたメガファウナはベッカーの部隊に襲われ、ベルリは初めてフォトン・トルピードを試す。低出力にもかかわらず数十機いたベッカーの部隊は一瞬のうちに壊滅し、ベルリも「あれがフォトン・トルピードの威力だってのか」と驚いていた。

 なお、劇場版『GのレコンギスタIV 激闘に叫ぶ愛』ではフォトン・トルピードの演出やリアクションが強化され、より恐ろしい兵器として描かれた。光の粒子が美しく輝くのに対しその攻撃は残酷で、モビルスーツだけではなくパイロットも何が起きているか理解する間もないままパチンパチンと消滅。フォトン・トルピードを放ったベルリ本人もその凄まじいまでの威力に気を動転させ、その場でパーフェクトパックを外している。

 宇宙世紀にはソーラ・システムやコロニーレーザーなどの戦略兵器が多数あるが、フォトン・トルピードもモビルスーツに与えるには相応しくない「絶対兵器」だ。実際、ベルリもその威力に危険を感じ、二度と使うことはなかった。

 戦争を背景にした物語を描く『ガンダム』シリーズ。リアルな世界観に視聴者は惹きつけられてしまうが、パイロットのリアクションひとつでも、戦争の恐ろしさを視聴者に突きつけてくる。

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