■『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』ギニアス・サハリン

 最後に紹介するのは、かつてのジオンの名門サハリン家の当主であるギニアス・サハリン。彼はアプサラスというモビルアーマーの開発に生涯を捧げ、今や没落してしまったサハリン家の再興を目論んでいる。

 彼は自身の目的のためなら手段を選ばず、アプサラスIIIの開発に携わった人々を殺害し基地を自分の管理下に置いている。周りの人間を平然と自分のための駒扱いしてみせるのだ。唯一の肉親である妹アイナもその例外ではないが、彼女に対しては愛憎入り混じった感情を抱いてもいる。

 しかし無用な争いを避けたいアイナと問答無用で連邦軍の殲滅を目論むギニアスは、考えの違いから決裂してしまう。

 彼自身、重い病気にかかっているだけでなく、母親が恋愛絡みの理由で自分達を捨てたと匂わせるような発言もしており、さまざまな不運もあって人格が歪んでしまった面もあるだろう。

 ジオンへの忠誠心もなければ連邦軍への恨みもなく、ただただサハリン家再興という妄執に囚われ散っていったキャラクターである。

 

 ジオン軍に属しているキャラクターが「いい人」に見えるのはジオンへの忠義からだろう。しかし今回紹介したキャラクターは忠誠心が薄く、特に政治的な信条を掲げているわけでもないという点が共通している。

 彼らも帰属意識を持ったり、何かを信じることができたりしていれば、せめてジオン側としての正義をしめすことはできたのかもしれない。

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