ガンダムの宇宙世紀シリーズといえば、地球連邦軍とジオン軍の対立によって起こるドラマが見どころのひとつだ。勧善懲悪で語ることが難しいストーリーもまた、本シリーズが視聴者を惹きつける理由だろう。しかし不思議と主人公から見て敵陣営とされることが多いジオン軍の方が、ドズル、デラーズ、アナベルなど義に厚いキャラが多いようにも思う。
今回は、上記のキャラとは対照的なジオン陣営の“許し難い非道キャラクター”を3人紹介していこう。
■『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』シーマ・ガラハウ
シーマ・ガラハウはジオン公国軍突撃機動軍所属の女将校。好戦的な性格で、中佐というある程度高い地位に就いている。しかし連邦軍との裏取引をおこない寝返ろうとするなど、ジオンへの忠誠心はきわめて薄い。
そのために上官であるデラーズの身柄を確保し、連邦軍に引き渡そうとするほどである。最終的にはデラーズの殉教的な姿勢に激昂し、射殺してしまう。デラーズは“志を持たぬ者を導こうとした”とも発言している通り、シーマに大義を教えようとしていたようだが、そうした善意は最後まで彼女に届くことはなかった。
シーマは過去に汚れ役ばかりをさせられており、コロニーに毒ガスを注入して住人を大量虐殺した責任を上官にすべて押し付けられたことや、故郷を失ったことから、帰属する場所がなくなっていく。そうした出来事が彼女の人格を歪めた原因ともいえるだろう。
主人公コウとの戦闘時の「お前は一体どっちの味方だ!」というセリフは、自分が味方を欺くようなことをしてきたからこそ出てきたもののようにも思えた。
■『機動戦士ガンダム』キシリア・ザビ
ジオン軍に所属するザビ家の一員で、デギン・ソド・ザビの長女であるキシリア・ザビ。ジオン軍の悪行といえばギレンが起こしているイメージが強いかもしれないが、彼女も負けず劣らず悪事をはたらいている。
キシリアの悪行といえばやはり、敗北が濃厚になった途端、味方兵が残っているにもかかわらず拠点の基地を爆破したことだろう。機密保持のためとはいえ、迷いなく兵士を切り捨てる姿は冷酷すぎる。
そもそも彼女はかなりの野心家であり、そのために弟ガルマを利用するなど手段を選ばないところがある。何かと前面に出たがるギレンとは対照的に、裏工作的な立ち回りをしていることが多いようだ。
そんな彼女はストーリー終盤、父親デギンを殺害した兄ギレンを銃殺し、総帥の座を奪いとった。
余談だが、彼女にはマ・クベ、キリングなどクセの強い部下が多い。これはキシリア自身が徹底した成果主義で、能力さえ高ければ人柄や素行は二の次と考えているからでもあるのかもしれない。
そうした価値観は「男子の面子、軍の権威、それが傷つけられてもジオンが勝利すればよろしい」というセリフにもよくあらわれている。