バトル漫画では、最強無敵のキャラクターだけではなく、自らの死期を悟り、病を抱えた状態にもかかわらず必死に戦うキャラがいる。そうしたキャラたちはいずれも奮闘の末、悲しい最期を迎えてしまうが、読者としては彼らの万全の状態を見てみたくなってしまうものだ。
病気がゆえに敗北してしまい、時に時代の分け目を作るきっかけにもなる彼ら。今回は『週刊少年ジャンプ』（集英社）の人気漫画にテーマをしぼり、「健康体だったら最強！」と呼び声が高いバトル漫画の名キャラたちを振り返りたい。
■ケンシロウも認める天才だったトキ
まずは今年９月で『週刊少年ジャンプ』での連載開始から４０周年を迎えた漫画『北斗の拳』から、北斗四兄弟の次男・トキ。
トキは、ケンシロウが兄弟の中でもっとも伝承者にふさわしいと認めた男でもある。その理由は、彼が人格者ということもあるが、読者の多くもあまりにも華麗な戦い方をするトキに魅了されたはず。筆者が特に衝撃を受けたのが空中を舞いながら「北斗百裂拳」を放つ「天翔百裂拳」で、その姿はあまりにも美しかった。他にも相手の力を利用する「柔の拳」は、あらゆる技を流れる水の如く受け流し、動きに淀みない……。
ラオウとの戦いでは、自らの秘孔を突くことで一時的ではあるが、力を取り戻す。それによってラオウを追い詰めることになったが、いつわりの強さでしかなく、ラオウを追い詰めることはできなかった。しかし、トキが万全だったとしたらラオウに勝っていたのかもしれない。
トキは２度ラオウと戦っているが、攻撃や防御の技術でラオウを上回っていたことは明白。病から来る体力の低下によって純粋に力が足りなかったことが敗因だろう。
ラオウやケンシロウは怒りを糧にして強くなるタイプだが、トキは違う。その拳はまさに「柔」そのもので、ケンシロウは「技の切れ 流れ 速さ 心技体 どれをとっても非の打ちどころがない」と評価していた。病がなければ底なしに強くなってしまうことも考えられる。ある意味恐ろしい……。
■全盛期の力を出せず敗北した白ひげ
尾田栄一郎氏による『ＯＮＥ ＰＩＥＣＥ』の四皇のひとり、白ひげもまた万全の状態を見てみたいキャラの一人だろう。
作中で白ひげが病に冒されているという直接的な描写はないが、初登場時にはたくさんの点滴をしており、船医であるマルコが「体調は悪化するばかりだ」と話しているところからも、健康体ではないことが分かる。しかし、そんな状態でも白ひげはエース奪還のために、海軍本部へ出向き、ありえない強さを見せつけた。
白ひげの持つ能力「グラグラの実」は、センゴクが「世界を滅ぼす力」と恐れるほどの力。そのため海軍からの総攻撃に対して互角以上の戦いを繰り広げたが、年齢と病には勝てなかったのだろう.......全盛期の力を出すことができず死亡してしまった。
仮に白ひげが万全だったとしたら、状況が変わったのだろうか。あの場面での白ひげは動かない体を無理やり動かして、精神力だけで戦っていたようにも見える。全盛期にあのゴールド・ロジャーと互角に戦い、世界最強の海賊ともいわれているだけあり、万全であれば海軍に遅れをとるとは思えない。海軍を全滅させないまでも、エースの奪還には成功したのではないか。そして、ロジャーの残した「ひとつなぎの大秘宝（ワンピース）」に最も近い海賊団になっていたかもしれない。まさに世界の運命を分けた大物の敗北と言えるだろう。
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