『ファイナルファンタジー』ドット絵時代の天野喜孝デザイン「人間タイプボス」の不気味なかっこよさの画像
ファミコン用ソフト『ファイナルファンタジーIII』(編集部撮影)
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 歴代『ファイナルファンタジー』作品の登場人物やモンスターの多くをデザインしてきた天野喜孝氏。『FF』作品を語るうえで欠かせないいわゆる「天野絵」の魅力に、多くのプレイヤーが釘づけになったのではないだろうか。

 初期作品はゲーム上ではドット絵だったため、各キャラデザインを詳しく見るためには攻略本やイラスト集を確認する必要があった。しかし、ドット絵でもボスタイプのキャラクターの場合は画面いっぱいに大きく描かれており、恐ろしさとともに天野絵の不気味なかっこよさが存分に伝わってきたもの。

 そこで、今回は「天野絵」の不気味なかっこよさが漂う『FF』の人間タイプのボスをいくつか振り返りたい。

■『FF4』より火のルビカンテ

 まずは『ファイナルファンタジー4』で初登場するゴルベーザ四天王のリーダー格のボス・ルビカンテだ。

「火のルビカンテ」といわれているように、炎系魔法や黒魔法を極めている。そんなルビカンテは他の四天王とは異なり、正々堂々と戦うために「さあ!回復してやろう!」と主人公パーティーを回復してくれる武人。また、最近では多くのボスキャラが使用する状態異常技や補助技も使用しない。

 ここまでの内容を読んだ未プレイ者は、デザインも勇ましくかっこいい武人キャラを想像してしまうかもしれない。しかしルビカンテは、紫色のまだら模様が施された赤いマントを全身にまとい、顔面は赤茶色で頭部は燃え盛る炎のような形状。さらに、マントから見える脚はなんと生足で、その後、ブーメランパンツのみ着用しているという事実が発覚した。

 インパクトのある見た目に武人らしいかっこいい精神をもつルビカンテ。このギャップによって、多くのプレイヤーの記憶に残るボスキャラになったのではないだろうか。

 ルビカンテは部下を使い、主人公の仲間のひとりであるエブラーナ国第一王子・エッジの両親を拉致し、モンスターへと肉体を改造した非道なキャラでもあるが、両親のデザインもまた秀逸だった。

 エブラーナ王はライオンと熊を混ぜたような獣型のモンスターへと変貌し、美しかったエブラーナ王妃は顔だけを人間のまま残され、頭部からコウモリの羽を生やした蛇型のモンスターへと改良。まさに半妖の不気味さが漂うデザインで、ドット絵ながらも天野氏の魅力が伝わる戦闘画面だった。

■『FF3』より、まどうしハイン

 続いては、『ファイナルファンタジー3』に登場するまどうしハイン。もともとはアーガスの神官でアーガス王の側近だったが、邪悪な力に取りつかれて魔物になったボス。はじめて「バリアチェンジ」を使ったボスであり、物理攻撃が効きにくく、弱点属性が変わる特性に苦戦したプレイヤーも少なくないだろう。

 そんなハインのデザインは、まさに不気味そのもの。赤、オレンジ、黄色、紺と色鮮やかな神官のような服装でカラフルである一方、ハイン自身は真っ白い骸骨姿。白いマントを体に巻きつかせ、主人公たちを指差している立ち姿で、紳士的ながらも死の匂いが漂うデザインに、初見で恐怖を感じた方も多いだろう。個人的には歴代モンスターの中でも非常に好きなデザインのキャラのひとりだ。

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